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東京・日比谷公会堂。2010年4月7日、日本経済大学渋谷キャンパスの初めての入学式が行われた。
(撮影・前田せいめい)
開式の言葉、総長から入学許可宣言と粛々と式が進む間、今時の若者としては珍しいほどに入学生はおとなしく、背筋を伸ばして席に座り、ほとんど私語が聞こえてくることもなかった。
ところが、日本でも活躍する京胡奏者の呉汝俊(ウー・ルーチン)さんが来賓挨拶で登壇すると、会場の空気がかすかに緩んだ。そして、呉さんが中国語交じりの日本語で「私も20年前に中国から日本にやって来ました。日本人の温かさ、日本のきれいさに感激する一方で、中国の文化の素晴らしさも改めて感じました。新入生の皆さんも、もっともっと日・中の懸け橋、世界との懸け橋になって下さい」と語りかけると、会場からは割れんばかりの拍手が起こった。
実は、日本経済大学渋谷キャンパスは、940人の新入生の約9割を中国からの留学生が占める。他にも、ベトナム、ネパール、バングラデシュなど17カ国からの留学生を受け入れ、留学生率は99%。日本人がたった12人という超異色大学の挑戦が始まろうとしている。
少子化・大学経営難時代にあえて東京進出
日本経済大学を運営するのは、福岡市に本拠を置き幼稚園から専門学校、大学までを全国で運営する都築学園グループ。もともと、日本経済大学は、1968年に福岡市で「第一経済大学」として開学(2007年、福岡経済大学に改称)。福岡県内を中心に、西日本地域の学生を集める中堅大学だった。
少子化に加えて、バブル期以降の大学新設ラッシュの反動で、日本の大学は入学希望者数が定員総数を割り込む「大学全入時代」を迎えている。各校は、推薦入試枠の拡大や、成績上位者に対する入学金や授業料の免除などを打ち出し、受験生獲得競争にやっきとなっているが、全国区の難関ブランド大学でもなければ、生徒数確保は容易なことではない。ここ数年は定員割れの大学が続出、日本私立学校振興・共済事業団の調べでは、私立大学の4割が2008年度決算で赤字に陥っている。
そんな逆風の環境下で、日本経済大学が、なぜ、あえて九州のローカルから、東京のど真ん中に進出を果たしたのか。
そこには都築学園グループのお家事情も深くかかわる。同グループは、東京を中心とする首都圏で東京マルチメディア専門学校、お茶の水はりきゅう専門学校など多くの専門学校を運営している。
しかし、贅沢を言わなければどこかしらの大学に入れる「全入時代」である。従来は専門学校で“妥協”していた層にとって大学へのハードルが低くなった分、専門学校の経営環境は大学以上に厳しくなっている。都築学園グループの複数の専門学校も、2009年度で廃止や、2010年度からの募集を停止しており、事態を放置すればグループ全体の経営がジリ貧になりかねない。専門学校の整理統合で発生する遊休校舎の有効活用策として、日本経済大学の渋谷キャンパスを開校する積極策に打って出たのだ。