陳晶晶さん。学生時代の過ごし方として「1年生のうちに日本語検定1級を取りたい」と抱負を語った

 ディスカッションが一通り終わると、いくつかのグループをピックアップして、その中の1人が全員の前で夢や目標について発表する。新入生の多くは、語学学校で日本語学習を積んでいるが、まだ、日本語に自信を持てない学生も少なくない。だからこそ、語学の授業以外でも、あえて、「日本語で話す」「人前で発表する」機会を設けるような工夫をしているという。福建省出身の陳晶晶(チン・ショウショウ)さんは「1年生のうちに日本語検定1級を取り、日本の企業に就職したい」と、ゆっくりと、でも、はっきりとした日本語で宣言、教室からは拍手が起こった。

 ビジネスマナー講座では、マナー講師を招いて日本式のお辞儀の仕方や、正しい敬語の使い方など、実践的な授業を展開する。さらに、秋からスタートするキャリアデザイン講座では、日本企業で活躍する外国人や、留学生の採用実績のある企業から人事担当者を招くなどして、就職活動が本格化するまでに、学生が求められる人材像を具体的に描けるようなプログラムを作っていく方針だ。

 専門の経営学の授業も、理論ばかりに偏ることなく、実践重視。吉田教授は「メガ商社の経営学」と題して、商社マンとしての長年の実体験に基づいたライブ感のある授業を進めている。

 吉田教授は、「学生の努力も必要だが、学校側の“企業努力”も不可欠」と考えている。学校経営は、学生が納付する入学金や授業料によって成り立っている。「一般企業と違い、学校は年度初めの時点で、その年の売上高がほぼ確定でき、事業計画が立てやすい業態。しかし、従来の学校は、そういう環境にあぐらをかいて努力を怠っていたのではないか」。とすれば、お客さん(=学生)に対して、良いサービスを提供し、満足してもらうことこそが、次の新たな客(=新入生)を呼び込み、経営を安定させる近道になる──。

壁一面に据え付けられたメールボックス。学籍番号を振り、学校からの連絡事項や、リポートの返却に活用。書類の溜まり方で欠席しがちな学生をチェック、通学を促すことも

 キャンパス運営は、「手続きや相談に来た学生を待たせない」「どんなことでも相談しやすい雰囲気をつくる」といったところからスタートさせている。さらに、渋谷キャンパスの1階のエントランスホールの壁1面にはメールボックスが設置されている。1つ1つの引き出しには全学生の学籍番号が振られており、学校からの伝達事項や、提出した課題や質問にクラス担任からのコメントを付した用紙の返却は、このボックスを通じて行われる。学生は、毎日ここから連絡事項を受け取る仕組み。

 逆に、ボックスに書類が溜まっていれば、授業への出席が滞りがちな証拠。事務局から学生に電話やメールで出席を促す連絡をするという。ただでさえ、言葉の壁を抱え、家族と遠く離れて暮らす留学生は、日本人の学生以上に不安定な状態にいる。途中で脱落する学生を出さないことも、“企業努力”の一環だ。

 吉田教授は「日本に来てよかった、この大学で勉強してよかったと思ってもらえるような大学にしたい。それは、日本経済大学のためでもあるが、大学生活を通じて1人でも多くの日本ファンをつくることが、日本がアジアでビジネスを展開していく上でも、役に立つはず」と信じている。