日本経済大学渋谷キャンパスの成否は、1期生を日本企業が求めるレベルまで育成し、就職の実績を上げることができるのか──に掛かっていると言っても過言ではない。そのため、同キャンパスでは、一般教養や経営学の授業だけではなく、1年生から徹底した就職教育を行う。

1年生からの就職教育

授業は日本語

 4月下旬、就職教育の第一歩となる「ビジネスマナー」授業風景をのぞいてみた。担当するのは、コンサルティング会社のフューチャー・デザイン・ラボ代表取締役で、同大学の講師を務める竹原啓二さん。

 2クラス合同で100人の教室はいっぱい。普通の大学の授業に比べると、少しゆっくりめではあるが、授業は日本語で行われる。

 冒頭では、ローソンの人事担当の執行役員・村山啓さんと、日本企業への就職の夢を実現させた先輩留学生からビデオメッセージが流れる。

まだ慣れない日本語。話がはずまないグループには竹原講師が声を掛けてムードメーク

 ローソンは2008年から日本で学んだ外国人留学生の採用をスタート。2009年度は全体の3割に当たる39人、2010年度は2割に当たる17人を採用した実績があり、日本企業への就職を目指す留学生にとっては、注目企業の1つ。ビデオメッセージに耳を傾ける学生たちの表情は真剣そのものだ。

 村山さんは「ローソンが留学生を採用するのは、日本人の考え方、働き方を変えてもらいたい、影響を与えてもらいたいと思っているから。将来的には中国現地法人の幹部社員として働いてもらうかもしれないが、当面は日本で働く覚悟がある人が最優先」と採用担当者ならではの視点を紹介。

 さらに「会社の中に1人でできる仕事はない。だから、ゼミやアルバイト、クラブ活動を通じて、コミュニケーション能力、チームワークを身につけてほしい。だからと言って、日本人とまったく同じになる必要はありません。日本人があまり自己主張をしないのであれば、きちっと自分の意見を言えることは、あなたの魅力になります」とアドバイスをした。

全員の前で発表。授業の中でも、日本語を話す、人前で意見を言う機会を取り入れている

 先輩留学生からは、「日本語検定1級を取って、周囲の人からは日本語が上手だと褒められたが、それでも、文章力、自己PR力は日本人に劣ってしまう。日本人の10倍は勉強して下さい」と厳しい言葉も。さらに「会話は普段の一日一日の積み重ねによって上達するもの。街で道を聞いたり、ご飯を食べに行って店員さんと話をしたり、とにかく、たくさんの人と日本語で話さないとだめです」と、日本語能力アップの重要性を説いていた。

 ビデオメッセージを見た後は、4~5人のグループに分けて、自己紹介を兼ねて卒業後の夢や大学4年間の過ごし方についてグループディスカッションする。慣れない日本語で四苦八苦しながらも、時折、教室のあちこちから楽しそうな笑い声が上がる。その間、竹原講師が1つ1つのグループを回り、声をかけたり、質問に答えたりする。