「ビンラディンが殺害されて、確かにアルカイダの脅威は低下しています。けれども残存するアルカイダのテロリストたちによる核兵器入手の野望は依然として衰えていません。同時に、核兵器開発の基本的技術は70年前にできており、世界中のさまざまなルートから入手が可能になっています」
小型核兵器はテロリストも入手可能
その会合で話し合われた脅威は、小型核兵器が売られている事実だ。
しかも1個や2個ではない。国際テロ組織が入手できる素地がすでに作られており、闇市場では告知が出されてさえいるという。核兵器の安全性が確実に保たれているわけではないため、危険度は高い。
つまり実際の核テロの脅威はゼロに近づくどころか、暴発する可能性をはらんだままなのだ。
核保有国による核兵器の保有システムや安全性確保には国際的なルールができていないと、同サミットに参加したサム・ナム元上院議員は述べている。タイム誌も今月、「将来、核兵器による攻撃がある可能性は30%から50%の確率で起こりうると専門家が推測している」と書いてもいる。
オバマ大統領の発言を契機に、こうした警戒論をメディアが伝えることには意義がある。だがむやみに核テロ攻撃の脅威を煽ることは慎重でなくてはいけない。
少なくとも米ロ両国による核兵器管理は、前回の核安全保障サミット以降も向上しているとの報告が出ている。それによって、米連邦政府は核テロ対策の予算を減らしてさえいる。
核テロに対する警戒は解くべきでないが、冒頭のオバマ発言によって、オバマ大統領は米国内からの反発も招いている。ワシントン・ポスト紙コラムニストのジェニファー・ルービン氏が書いた。
「オバマ氏はあの発言でウラジーミル・プーチン大統領を侮辱した。ロシアが単なる特定地域の強国とはいったいどういうことか。それは自分が最強国のリーダーと定義したいからなのではないか。自身への慰めでしかない。ニューヨークが核テロの脅威に晒されているというのは、直近の課題に目を背けているからにほかならない」
この論評が当を得ているのであれば、オバマ大統領は米メディアと国民を翻弄したことになる。
ホワイトハウス報道官の否定が本当であるのか、それともオバマ氏が口にした核テロ脅威論に現実性があり、計算したうえでの発言だったのか、大統領本人しか知り得ないことかもしれない。