発言に敏感に反応したのは地元ニューヨークのタブロイド紙、ニューヨーク・デイリーニュースとニューヨーク・ポストだった。

 デイリーニュース紙は1面で、核爆弾が爆発した時のキノコ雲の写真を載せ、「ニューヨーク市で核爆弾ですよね、大統領?」と問うた。

米国最大の関心事はマンハッタンへのテロ

9.11から10年、いまだ根強い「米政府陰謀説」

2機の旅客機が衝突した世界貿易センタービル(2001年9月11日)〔AFPBB News

 ポスト紙は「オバマ大統領の最大の憂慮はマンハッタン核攻撃」というタイトルを打った。タブロイド紙らしく、おどろおどろしい紙面づくりで、読者の関心を煽った。

 しかしニューヨーク市警察はホワイトハウス同様、冷静にオバマ大統領の発言を否定してみせた。現在、核兵器によるテロ攻撃の予告や脅威は察知していないという。

 仮に核テロの予兆をつかんでいたとしても、政府は簡単に発表するわけにはいかない。人口800万強のニューヨーク市で、核兵器のテロ攻撃の情報を発表したらパニックは避けられない。それが正確であれ不正確であれ、市民に与えるインパクトはとてつもなく大きい。

 ただニューヨークが核テロに警戒の手を緩めるべきでないことは、ビル・デブラシオ市長が十分に了解している。大統領の「核攻撃の可能性」は冗談と受け流せないとし、声明を出した。

 「オバマ大統領の発言は、ニューヨークが相変わらずテロ攻撃の最初の標的になっていることを再認識させるものです。常に脅威に直面している事実を厳粛に受け止めて、今後も警戒に努めます」

 核テロ対策に尽力することに異論を挟む人はいないだろう。すべての国際テロ組織が活動を停止する可能性はないと言わざるを得ない以上、政府が防止策に努めるのは当然である。

 ハーグでの核安全保障サミットを前に、首都ワシントンで世界核安全保障政策サミットが開かれていた。その席で、ハーバード大学JFケネディ行政大学院科学・国際関係ベルファー・センターのビル・トビー上級研究員は核テロの脅威について述べている。