2014年2月18日付「ウオールストリート・ジャーナル」は、サイバー攻撃に遭い苦境に陥るビットコイン取引所の状況を伝えているが、今年に入り世界のメディアは連日のようにビットコインに関する動向を報じている(東京に拠点を置く取引所、マウントゴックスは取引停止が続き、ビットコインの換金が不能になるのではとの懸念が高まっている)。

 ビットコインは、リーマン・ショック後の2009年5月、「ナカモト・サトシ」と名乗る人物(正体は不明)が論文でその原理を発表、国家や中央銀行に管理されない仕組みに共感したハッカーたちによって開発されたものである。

 ビットコインは高度な演算問題を解くという作業(採掘)によって生み出され、インターネット上の取引所を通じて米ドルや円などの信用貨幣との交換が行われる。決済は金融機関を通さないため手数料が発生しないことから、国境を越えた送金などに利用されるようになった。

 ビットコインが世界的な脚光を浴びるようになったのは、2013年3月のキプロスの金融危機だった。キプロスの預金者と、同国を租税回避地として利用してきたロシアの富裕層が、銀行から引き出したカネの逃避先として選んだのがビットコインだったからだ。

 それまで10米ドル以下で推移していたビットコインの市場価格が急騰、4月には200米ドルを超えた。その後人民元に不安を感じていた中国人がビットコインに注目したため、12月に入り中国人民銀行が利用禁止の通達を出した時点で市場価格は1000米ドルに達していた。

 このように世界の注目を集めるビットコインだが、「通貨」になる日は来るのだろうか。

 (注:貨幣と通貨は異なる。「貨幣」とは商品交換の際の媒介物(お金)であり、「通貨」とはある国で通用する貨幣のことを指す。江戸時代の「貨幣」が現在使えないのは、「通貨」ではないからである)