アレルギー事故が後を絶たない。2012年12月、東京都調布市の小学校で“乳アレルギー”を持つ女児が死亡した。原因は給食のチーズが入ったチヂミだった。

 いまや全人口の1~2%、乳児では約10%がアレルギーを持つと言われる。アレルギー対応は学校や企業を問わず社会の中で欠かせなくなっているのだ。そこで今回は事故を振り返り、アレルギー事故を防ぐためにどう対応すればいいのか、現状の問題点や背景、課題について考えてみたい。

現場依存になっているアレルギー対策

 学校側は女児の乳アレルギーを把握していたので、教室で給食を受け取らせず、チーズ抜きのチヂミを調理員が手渡すなどの工夫をしていた。

 しかし、女児がおかわりを求めた際、担任は保護者が作成した献立表を見て、アレルギー物質が含まれていることを示す印がついていなかったため、女児にチーズ入りのチヂミを提供してしまった。本来、学校では「除去食一覧表」でアレルギー物質が入っていないことを確認することになっていたが、今回は確認していなかった。

 学校側は「担任の確認ミス」として謝罪しているが、アレルギーの対応が現場に依存されていることも見逃せない。個人に責任を負わせるのではなく、ミスが起こらないような仕組みづくりを考えていくことが必要不可欠だろう。

アレルギー反応の正体は過敏な免疫反応

 食物アレルギーでは、細菌やウイルスの侵入から体を守る「免疫」のシステムが影響していると考えられている。免疫のシステムでは、ウイルスなどの病原体が体内に入ってくると、身を守るために抗体を作り、再び体内に入ってきた病原体を攻撃する。

 アレルギーを引き起こす原材料となる「卵」などのアレルゲンに対して抗体が作られ、アレルゲンが体内に入ってくるとアレルギー反応を起こす。つまり、本来、無害なはずの食べ物に免疫が過敏に反応して、体を傷つけているのだ。

 食物アレルギーは様々な症状をもたらす。かゆみや湿疹などの皮膚の症状、鼻水やくしゃみなど粘膜の症状、咳き込みなどの呼吸器の症状、嘔吐や下痢など消化器の症状、頭痛など神経症状、血圧低下など循環器の症状だ。2つ以上の臓器に症状が出ることを「アナフィラキシー」と言う。これに加えて、血圧低下や意識障害を伴う重い症状は「アナフィラキシーショック」と言われ、命にかかわる。

 また、アレルギーには、すぐに症状が出る「即時性」と、すぐには症状に現れない「非即時性」がある。即時性では食品を食べた直後から2時間以内に症状が現れる。非即時性にはさらに、6~8時間内に症状が現れる「遅発性」と、翌日から数日後あたりに反応が起こる「遅延性」がある。非即時性では、時間が経ってから反応が起こるため何が原因か分かりにくいこともある。これらを併せ持つ症状の人もいる。