ジョージ・W・ブッシュ政権時代の国務長官であるコリン・パウエル氏とトヨタ自動車の豊田章男社長がリーダーシップについて議論するから聞きに来ないかと誘われた。豊田社長は恐らく父親譲りの慎重な性格のせいなのだろう、インタビューでも講演でもあまり面白い話を聞いたことがない。でも、不思議な2人の組み合わせに興味をそそられて行くことにした。
社長を辞めるつもりで米公聴会に乗り込んだ豊田章男社長
行ってみると意外にも“期待”は裏切られた。普段はほとんど一般論に終始する豊田社長がけっこう細部とエピソードにこだわって発言しているではないか。
パウエル氏が「優れたリーダーは細かいところにまで気を配るものだ」と発言したのが効いたのだろうか。
というわけで、今回はパウエル氏と豊田社長の議論をお伝えし、パウエル氏が最近記したリーダー論(『リーダーを目指す人の心得』飛鳥新社)も少しご紹介したいと思う。
「私は社長になって以来、いい思いをしたことがありません。社長という字は間違いで、私の場合には謝長と書くのが正しいのかもしれません」
「何しろ社長就任以来、業績が悪くて謝り続けなければなりませんでしたから。また残念なことに品質問題でも世界中の人たちにご迷惑をおかけし、米国では議会の公聴会に呼ばれ、その席でお詫びを申し上げなければなりませんでした」
リーダーという者は失敗を恐れてはいけない、勇気を持って前に向かって進まなければならないというパウエル氏の発言を受けてのものである。
「日本の戦国武将にはしんがり大将という役割がありました。仲間の武将とその兵隊たちが安全に退却できるように最後の最後まで戦いながら撤退していく」
「私は米国の公聴会に呼ばれたとき、まさしくしんがり大将の気持ちでした。社長になって1年も経っていないけれど、きっと社長としての自分はこれが最後だろうと・・・」
「社長は恐らく辞めることになるかもしれない。でも、それはどうでもいい。トヨタ自動車が潰れるかもしれないという危機でしたから」