2012年11月19日、インテルの5代目CEOポール・オッテリーニが、来年2013年5月に退任することを発表した。

 米バーンスタインのアナリスト、ステーシー・ラスゴン氏は、「一見計画的とも見られる経営トップ交代だが、インテルが“史上最大の難題”に直面しているこのタイミングでの発表は意外だ」とコメントしている(「ウォール・ストリート・ジャーナル」日本版、2012年11月20日)。

 私は、“史上最大の難題”どころか、インテルが会社存亡の危機に直面していると思っている。この退任報道は、その一端を象徴する出来事と捉えている。

 今起きている現象には、たとえそれが突拍子もないことに見えたとしても、必ず、その原因がある。インテルが危機に陥り、オッテリーニがCEO退任を発表した背後には、「パラノイア(偏執狂)でなければ生き残れない」という言葉で有名な3代目CEOアンドリュー・グローブ(現在上席顧問)の幻影がちらつくのである。

なでしこジャパンの優勝とインテルの変調

 私がインテルの変調に気づいたのは、昨年2011年の夏である。そのきっかけは、2011年女子ワールドカップドイツ大会で、なでしこジャパンが優勝したことである(突然話がサッカーに変わる)。

 なでしこは、国際サッカー連盟 (FIFA)世界ランキング2位の開催国ドイツ、同1位の米国を破って優勝した。東日本大震災、福島原発事故、そして混乱が続く菅直人内閣と、閉塞感が漂っていた日本に、なでしこジャパンは、目の覚めるような明るい話題をもたらした。

 決勝戦で米国は、シュートがことごとくクロスバーを叩き、PK戦ではまったくゴールを決められなかった。もしサッカーの神様がいるのなら、震災の国から来たなでしこジャパンを優勝させたいと思っていたのかもしれない。

図1 国際サッカー連盟(FIFA)女子ランキング

 ところが、FIFAにより発表されるランキングを見てみると、なでしこジャパンの優勝は、あながち、フロックとは言えないことが分かる(図1)。ランキング1位と2位の常連国、米国とドイツに対して、なでしこジャパンのランキングは急上昇中であり、いつ1位、2位になってもおかしくない状況だった。ワールドカップに続くロンドン五輪でもなでしこは準優勝を果たし、ランキングも4位から3位に上がった(2012年8月17日発表)。

 チャンピオンは永遠ではない。いずれ挑戦者に取って代わられる日が来る。たまたま、女子サッカーでは、それが2011年7月に起きたということだろう。