マハティール マレーシアには「マレーシア株式会社」というものがあって、かつての日本のように国と民間企業が一緒に発展できるように協力し合っている。何か悪いことがありますか。
韓国だってやっているでしょう。なぜ日本ができないのでしょうか。米国の圧力と言われるかもしれない。しかし、その米国だって民間企業を山のように支援している。
米国の金融機関がつぶれました。そのとき米国の政府は大変な額の援助をしていますよね。産業を育成するために国が民間企業を支援するより、こっちの方がずっと悪いでしょう。
日本はいつまで米国の価値観を一方的に受け入れるのか
川嶋 確かに日本には日米貿易摩擦のトラウマがあると思います。国が民間企業を支援すると米国からすぐに叩かれるのではないかと。
マハティール 日本はいつまで米国の価値観を受け入れるつもりなのですか。そろそろ目を覚ますべきではないでしょうか。
プラザ合意で円は大幅に切り上げられました。その結果、順調な成長を続けていた日本経済は一気に不況になってしまったのはご承知の通りです。
当事、問題は米国にあったはずです。なのに日本は円を切り上げて米国を助けることに同意しました。あのとき米国に自分の通貨を切り下げさせるべきだったのです。日本が通貨を切り上げる必要はなかった。
日本は米国とばかり貿易をしているのではありません。世界中の国々と貿易をしている。円を大幅に切り上げたことで、米国以外の国でも日本製品は売れなくなってしまいました。
私からすると、日本は米国を富ますことに熱心に見えます。そろそろそんな考えは捨てて、日本自身を富ますことを考えるべきではないでしょうか。
そして優れた日本製品が買いたくても買えなくなった国もあるということを日本は知るべきです。円を切り上げたことでそうした国の豊かささえ犠牲にしたことになるんです。