マハティール 私が首相であった時代には、原発の導入は全く考えませんでした。それは、原子力に対する知識が未熟だからです。マレーシアが未熟というのではなく、人類という意味でです。
原子力エネルギーを取り出す技術は確かにかなり確立されました。しかし、一度放射能を出し始めた物質から放射能を取り除く技術は全くできていない。
核のゴミ問題を解決できた国は1つもない
つまり、原発から必ず出る核のゴミをどう処理していいのか分かっていない。埋めることさえできない。技術がまだ未熟なんです。世界中で核のゴミの問題を解決できた国は1つもありません。
確かに、原子力発電はコストが安いのかもしれない。しかし、ゴミの問題が全く解決できていない段階で原発を導入するわけにはいきません。
多少コストが高くてもほかのエネルギーを使うべきなのです。化石燃料に頼らない自然エネルギーの利用方法が世界中で開発されています。そちらに期待すべきだと思います。
とりわけ日本には十分な水力がありますよね。冬の間に山に積もった雪が解けて川に流れ込み、一年中、豊かな水資源に恵まれている。しかし、日本はこの水資源を十分に活用しているとはどうも思えない。
水力発電はイニシャルコストは高いかもしれないが、発電コストという意味では非常に安いし、メインテナンスも楽です。原発の事故を起こしたいま、こうした自然エネルギーの利用を真剣に考えるべきではありませんか。
もちろん、風力とか太陽光発電とかも日本の技術力をもってすれば能力を上げてコストを大幅に下げることも可能でしょう。
川嶋 確かにおっしゃる通りなんです。しかし、日本の政府や官僚は原発という既得権にどっぷり漬かってきたから、どうしても原発を再稼働したい。この1面だけでも日本の未来を全く考えていないと言わなければなりません。
さて、原発は中国も熱心です。地震大国である日本とは違うとはいえ、日本の品質管理をしても福島第一原子力発電所だけでなく様々な事故を起こしてきた原発を中国が次々と建設しようとしているのは、ちょっと怖い気がします。