川嶋 アジアは元気ですね。それに引き換え日本は東日本大震災と原子力発電所の事故があったとはいえ、非常に暗い。しかし、日本が力を失ったとは思えないのです。いまでも力は持っていると思います。では何がいけないのか。

 いまから30年前にルックイースト政策を取られ、ずっと日本を見られてきたマハティールさんにぜひお会いして、日本についてお聞きしてみたかったのです。

 例えば、もしマハティールさんが日本の首相だったらどんな政策を取られるかとか(笑)。

第2次世界大戦後の自分たちを思い返せ!

ペトロナス・ツインタワーの最上階の執務室でインタビューに答えるマハティール元首相。1925年7月10日生まれで、今年87歳になる。

マハティール 少し時計の針を後ろに戻してみてください。第2次世界大戦後、焼け野原となった日本は、非常に強い意志を持って日本を一から作り変えました。これは外から見ていると奇跡的なことでした。ものすごいパワーを感じました。

 今の日本に足りないのは恐らく、あの時のような強い意志だと思います。

 リーダーにだけ足りないのではありません。日本国民一人ひとりに、日本を良くしたい、経済をさらに発展させて豊かになりたい、日本をもっと強い国にしたいという意志が薄れてきているのではないでしょうか。

 経済で言えば、日本はもっと国内消費を増やすことができるはずです。そうすれば景気が良くなりもっと高い成長が期待できる。そうなれば国民はもっと豊かな生活を求めて前向きに投資や消費をするようになる。

 日本のリーダーはそこを刺激してやるべきです。私だったらそうします。

 ただ最近の日本を見ていて残念なのは首相が2年以内に交代してしまうことです。1つの施策をしっかり根づかせるにはそれなりの時間がかかります。1年や2年で交代して、また別の方針を打ち出していたら、何もできません。時間が足りなすぎます。

 私は22年間も首相の座にいましたから、マレーシアのことをじっくり考える時間があった。1つのことをやり切ろうと思ったら最低でも3~4年はかかります。それだけの時間を国民は首相に与えてあげるべきでしょう。

 そのうえで歴史に何も残せないような施策しかできないなら、辞めさせればいい。しかし、日本のメディアときたら、次の首相候補が決まって、正式に首相に就任する前に、もう激しい非難を始めている。