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 日本はどうしたら再び継続的な成長路線に戻れるのか。関西経済連合会の下妻博会長は、「地道にコツコツと地域社会やアジア諸国へ貢献していくことだと話す。一見迂遠なようだが、大上段に構えて挑戦し、大きなリスクを取るよりも確実な方法ではないかと言う。

 日本の成長戦略をきちんと描くだけでなく、実現に向けてのロードマップも政府がしっかりと用意しない限り、一企業としては大きなチャレンジには常に大きなリスクがつきまとう。今はそうしたリスクを取れる時ではない。それよりも、地道な活動こそが企業にとっても、国にとっても必要ではないかと言うのである。

 それでは、具体的にはどのような活動を私たちはしていけばいいのだろうか。

関西の中小企業活性化がモデルケースになる

下妻博氏/前田せいめい撮影下妻博・関西経済連合会会長(撮影:前田せいめい、以下同じ)

 日本の問題を語る場合に、関西はモデルケースとして面白いのではないかと思います。大企業の本社が集まった東京では、日本に巣食う本当の問題が隠れてなかなか見えない気がするからです。

 下妻会長は、大阪府の橋下徹知事と一緒に新しい試みをされていると聞いていますが、日本を良くするには何が必要だとお考えでしょうか。

下妻 関西は東京に比べたらうんと規模が小さいから、分かりやすいというのはあります。とりわけ、中小企業が典型例ではないかなと思うんですよ。関西には大企業も多いけれども、関西経済をしっかりと支えているのは中小企業なんです。

 その中小企業を見える形で活性化してあげることができれば、1つのモデルケースになるのではないかと考えています。

 それは面白そうです。

下妻 関西には以前、関西経営者協会という組織がありました。だいたい1000社くらいの中小企業がそれに属していた。関東で言えば日経連の下部組織みたいなもの。そこのリーダーを近畿日本鉄道の辻井昭雄会長(当時)がやっていて、私が辻井さんに会った時に、「辻井さんねぇ、もうあんたのところの仕事はなくなるんじゃないか」と言ったんです。

 労務対策、労働条件の問題、対組合の問題そのほか。対組合問題と言ったって、昔みたいな厳しい組合とか雇用の問題はなくなっているわけで、そんなことを全国レベルで統一してやる時代じゃないでしょうと。そして、「関経協なんて今どき要るんですか」と聞いたら、要らないと言われる。

 ただ、小さい企業は、労働法の改正に伴う従業員との様々なリーガルな問題などへの対応がなかなかできない。法律の理解や対応ができていない企業が多いんです。そういう企業の手助けは必要です。

 そういうお手伝いは、大企業の集まりである関経連ならできる。それなら関経連と関経協が一緒になったらいいじゃないかということになって、辻井さんと話し合って、一緒になることにしました。