民主党の新政権が誕生しておよそ3カ月が経過した。事業仕分けなど派手なパフォーマンスで国民の関心を集める一方、普天間問題や天皇の政治利用など外交面では稚拙な手腕ばかりが目立つ。さらに現在の日本にとって最も大切な成長戦略が全く見えてこない。

 かつて官民が一体となって日本経済を高度成長に導き、世界からは「日本株式会社」と揶揄されるほど、羨望と脅威の眼差しで見られてきた日本経済の行方やいかに。鳩山由紀夫政権は、日本株式会社の中興の祖となれるのか、それとも衰退への道を加速させるのか。

 地方の活性化こそ日本再生に不可欠と言う関西経済連合会の下妻博会長(住友金属会長)に今後の日本経済の行方と問題解決の処方箋について聞いた。

世の中のムードに閉塞感が漂う

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 2009年は何と言っても、「政権交代」が最も大きな話題でした。日本はこのままではいけない。変えなければならないという国民の期待がそれを実現させたと思います。

 しかし、新政権が誕生して100日が過ぎた段階で、期待の一方で何も変わらないのではないかという失望感も出てきたような気がします。部分的には後退感すらあります。

下妻 新政権になってディプレッションを起こしているような気がしますね。マクロ経済で何パーセントの経済成長があるとかないとかという外面的な問題というよりも、世の中のムードというか内面的なところで強い閉塞感が生じてしまった。

 経済的な閉塞感はもちろんなんですが、本来は私たち国民が心配しなくてもよいはずだったことも心配しなければならなくなった。例えば、沖縄の問題、外交の問題。

 これらは、素人が口を挟めない問題でしょう。挟んでもうまくいかない。国際政治の専門家、外交のプロに任せておけばよかったことです。ところが、そんなところまで不安になるような事態が起きている。日本はどうなってしまうのかと。

政策が変わるのが怖くて、企業はリスクを取れない

 普天間基地の問題は、いくら産声を上げたばかりの赤ちゃん政権とは言っても、もっとよく考えて発言したり行動すべきだったと思います。日本という国全体が本当に赤ん坊のような国だと世界から思われたのではないでしょうか。一度できてしまったしこりを取り除くのは大変だと思います。2010年に重大なテーマを新たに作ってしまいました。

 さて、外交の問題も重要ですが、私たちの目下の最大関心事はこの国の経済の行方です。新政権の経済政策、とりわけ日本の再生には不可欠な地方経済への影響という意味ではどうご覧になっているのでしょうか。

下妻 ここもディプレッションですよ。不安で仕方がない。地方を活性化させようという取り組みは、自民党の安倍晋三首相の時代に始まっていました。地方ができることは地方に任せて、中央政府はそのサポート、少なくとも精神的サポートはしようという意思は強かったと思います。

 関西がアジアへのゲートウエーになろうという立ち位置をきっちり決めたことに対し、それに向かうムーブメントに対しては、しっかり応援しようという意思を示してくれました。だから具体的に政策で何をしてくれたかというのではないけれども、少なくとも関西の立ち位置を理解してくれた。

 しかし、民主党政権になって、そうした応援がしてもらえるのか皆、不安に思うようになってしまった。

 鳩山由紀夫首相が就任早々、東アジア共同体構想をぶち上げました。それは素晴らしいことだと思います。でも内容はよく分からない。どんな共同体にするのか、経済的な協力体制なのか、将来の通貨の統合を目指すのか、見えてこないのです。

 それが見えないと、民間企業としては何も手が打てません。国としてこういうことをするから、民間企業にはその方向に沿ったバックアップをしてほしいというのが手順です。それがあれば、民間企業はその機会をどう活用していくかという道が見えてくる。

 「国が支援してくれそうだから、こんなことをしてみよう」とか、「これは国策に合うはずだから動いてみよう」という自信を民間企業が持てなくなっているのです。下手をすると、「お前たちが勝手にやったんじゃないか、俺は知らないよ」と言われかねない。政府に梯子を外されるのではないかと不安になって動けなくなってしまった。