トランプ氏の応援に駆け付けたイーロン・マスク氏(10月5日ペンシルベニア州バトラーで、写真:AP/アフロ)

激戦州にカネ導入、Xでフェイク情報拡散

 電気自動車(EV)大手テスラ、火星探索を目指すスペースXなどを率いる実業家イーロン・マスク氏が、苦戦を強いられているドナルド・トランプ共和党候補の応援に大車輪だ。

 マスク氏は、今年7月にトランプ氏支持を正式に表明して以降、スーパーPAC「America PAC」を立ち上げ、毎月850万ドルを集め、激戦州に照準を合わせた口コミ作戦(テスラ売り込み作戦で学んだ必勝戦略だという)を指示してきた。

 同時に自身が買収したX(旧ツイッター)の影響力を武器に、虚実ないまぜの情報を発信してトランプ支援のギアを上げてきた。

 それでも足りないと見てか、マスク氏は、トランプ氏が7月、暗殺未遂に遭った米東部ペンシルベニア州バトラー(人口1万2970人、89%が白人)の現場で10月5日に行った選挙集会に、黒装束(黒いMAGAの帽子に「Occupy Mars」(火星を占拠せよ)と書かれた黒っぽいTシャツ)で現れた。

 壇上で飛んだり跳ねたりして「トランプ氏こそ戦火の勇気を持って行動する男だ」と聴衆に訴えた。

 近隣州からも動員された熱烈なトランプ支持者約1万人は、この世界一の金持ちの一人の異端起業家のパフォーマンスに拍手喝采した。

nytimes.com/elon-musk-trump-butler-rally.

 支持率では目下、カマラ・ハリス民主党候補が1%リードするペンシルベニア州でトランプ氏が勝利するカギは、数%の無党派層の浮動票を獲得することだ。

(10月1日現在のクック・ポリティカル・リポート世論調査ではハリス氏50%、トランプ氏49%)

cookpolitical.com/2024-swing-state-project/swing-state-polling-finds-deadlocked-presidential

「トランプ支持の岩盤支持者を何万、何百万人集めても浮動票集めにつながらない」(主流メディア政治記者)

 とは言え、トランプ氏の移民政策や人工中絶に反対した「ハチの一刺し」とも言えそうなメラニア夫人の新著が出回っている昨今、「有名人マスク」の飛び入り出演は、一過性の巻き返しには大いに役立ったはずだ。