英国国際戦略研究所(IISS)が主催する「アジア安全保障会議」(シャングリラ会合)に出席し、韓国の李相喜国防相と握手を交わす石破茂防衛相(当時)(資料写真、2008年5月31日、写真:ロイター/アフロ)

(韓光勲:ライター、社会学研究者)

石破茂氏の外交スタンスは?

 自民党の石破茂新総裁が国会で首班指名を受け、新しい内閣総理大臣となった。石破新政権のもとで日韓関係はどうなるのだろうか。石破氏の著書や最近の世論調査から読み解きたい。

 石破氏は自民党総裁選に先駆けて、2024年8月、著書『保守政治家 わが政策、わが天命』を出版している。自身の来歴や現在の政治に対する考え方が率直に語られていて非常に興味深い。「政策通」という前評判通りの見識をよく示している本なので、一読の価値がある。

 現在の国際情勢を語った第6章「わが政策スタンスを語る」の中で「外交力と抑止力は二択ではない」という節がある。アジア太平洋地域の平和を維持するためには外交力と抑止力の両方が必要であると力説している。やや長くなるが引用する。

<そんな国際情勢下(ロシアのウクライナ侵攻や中台関係の悪化─引用者註)ゆえにでしょう。「今日のウクライナは明日の日本だ」とか、「台湾有事が急迫している」とかいう議論も目立つようになりました。しかしそうであればこそ、ロシアや中国との外交関係を絶やさない努力が、一方で重要だということを、強調すべきだと思います。

 もちろん、米国やG7諸国との外交は大切です。日本は憲法においても「国際社会において名誉ある地位を占めたい」と宣言しているのですから、味方や友人は多いほうがいいに決まっています。が、そうであればこそ、地政学的に最も近い朝鮮半島をないがしろにするわけにはいかないのです。北朝鮮との交渉において何らかの糸口を見つけることも、日本の安全保障、ひいてはアジア太平洋地域の平和と安定のために必要なはずです。>