石破氏は「抑止力は必要である」という現実主義的な姿勢は前提として、その上でロシアや中国、北朝鮮との対話も欠かせないとする。「外交力と抑止力は二者択一ではない」というのはまさにその通りで、抑止力があるからこそ外交ができるのであり、より良い外交のためにこそ抑止力が必要である。両者は対立する概念ではなく、相互補完的な関係にあるのだ。

日韓関係の改善基調は続くのか

 その上で、石破氏は現在の日韓関係をこう評している。

<日韓関係は、尹錫悦大統領の明確なリーダーシップによって劇的に改善されつつあります。この好機を日本側もさらにフル活用し、尹政権が韓国国内において少しでも有利な立場に立てるよう、できるだけの努力をしなければなりません。>

 このように、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領のリーダーシップを評価し、日韓関係の改善を望ましいことであると述べているのだ。これは岸田文雄首相と尹錫悦大統領のもとで進んだ日韓関係の改善基調を受け継ぐ宣言であると読めるだろう。

 来年2025年は日韓の国交正常化から60年の節目の年である。韓国政府高官は、1998年以来の「日韓共同宣言」を出す方向に意欲を示していると報道されている。1998年の「日韓共同宣言」は小渕恵三首相と金大中大統領(いずれも当時)が発表した。日本は歴史問題で「痛切な反省とおわび」を表明し、韓国側も評価することで未来志向的な関係を目指したものだ。