依然として存在する歴史認識問題

 以前の記事でも紹介したが、戦後日本を代表する国際政治学者、高坂正堯(1934~1996年)は「各国家は力の体系であり、利益の体系であり、そして価値の体系である。したがって、国家間の関係はこの三つのレベルの関係がからみあった複雑な関係である」と述べている。

 これを日韓関係に当てはめると、軍事・安全保障面(力の体系)では両国は関係を深めており、日韓の往来が盛んになるなど、経済的(利益の体系)にもある程度の相互依存関係にある。

 問題は価値観(価値の体系)だ。韓国人観光客の日本訪問が増え、日本への良い印象を持つ人は最高値を記録した。これはポジティブな調査結果である。ただし、良くない印象を持つ人にとっては、歴史認識問題が依然として存在する。韓国政府の対応も世論の支持を必ずしも受けていないのが現状だ。

 石破氏の言葉に戻ろう。「尹政権が韓国国内において少しでも有利な立場に立てるよう、できるだけの努力をしなければなりません」と述べていた。日本との関係改善を進める尹政権を手助けしたいという趣旨である。

 具体的な政策の中身はまだ分からないが、岸田首相の路線を受け継ぎながら、2025年に新たな「日韓共同宣言」を出す可能性が高いはずだ。歴史認識問題の動向を注視する必要はあるが、当面の両国関係は岸田首相時代のように前向きにコントロールされると考えてよいだろう。

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