トランプに直接ではなくPACを使った理由

 その点でバイデン政権にはビジネスで裏切られた面が少なくない。

 具体的にトランプ氏を物心両面から支持することを決めたのは、今年2月16日、シリコンバレーの主だった億万長者の起業家や共和党戦略家らがフロリダ州パームビーチで開いた会合だった。

この会合にはトランプ氏は出席していない)

 出席者の一人はこう明かす。

「戦略家のカール・ロブ氏(ジョージ・W・ブッシュ元大統領の懐刀だった)から、『共和党大統領候補を勝たせるには、上下両院議員候補、知事候補といったローカル候補者に軍資金を配る必要がある』と発言があり、別の出席者から(トランプ氏よりも)ニッキー・ヘイリー候補(元国連大使)の方が適格者ではないかといった意見も出された」

「マスク氏は『私はそれほどトランプ氏が好きではないが、不法移民問題は最重要課題だ。バイデン氏は何百万という移民の入国を許している。トランプ氏は不法移民入国阻止に必死だ。移民が爆発的に増えれば、人口構成は激変し、その結果、(移民は民主党に投票するだろうから)共和党は選挙に負けてしまう』と発言」

「『トランプ氏に直接、選挙資金をやっても裁判の弁護士料に流用し、選挙管理委員会から公表されてしまう。ここは新たにスーパーPACを作り、これを通じてトランプ選挙対策体制を立て直す必要がある』といった提案があった」

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 マスク氏はその後、スーパーPAC「America PAC」を創設し、毎月850万ドルを拠出、激戦州になると思われる7州の選挙体制へのテコ入れに着手した。

(ウォール・ストリート・ジャーナルが、トランプ氏は4500万ドルを出したと報じたが、マスク氏はこの額については否定した)