ハリケーン「ミルトン」の暴風雨によって建設用クレーンが倒れ、オフィスビルの一部が破壊された(10月10日、写真:AP/アフロ)

 大統領にとって「鬼門」のハリケーン

 米南部フロリダ州に上陸したハリケーン「ミルトン」(カテゴリー5=5段階の最高)は、現地時間10月9日午後(日本時間10日午前)、勢力を弱めたものの、2020年大統領選でドナルド・トランプ共和党候補が圧勝していた同州農村部の道路、河川、住宅の被害が相次いでいるほか、広い範囲で停電が起こっている。

 フロリダ州など南部では、9月下旬に直撃したハリケーン「へリーン」(カテゴリー4、5段階のうち2番目に強い)の影響で大規模な洪水や土砂崩れが相次ぎ、230人以上が死亡するなど大きな被害が出たばかり。

 ジョー・バイデン大統領は、連邦緊急事態管理局(FEMA)を通じて、ハリケーンの接近に備えて700万人以上に避難命令を出した。

 10月9日の「ミルトン」上陸前に、およそ300の避難所に5万5000人以上が避難した。

 ハリケーンから市民をどう守るかは、米大統領の政治生命を大きく左右する。

 2005年にルイジアナ州南東部を襲った「カタリナ」(死者1800人、被害損額1250億ドル)の際に、テキサス州の牧場で休養していたジョージ・W・ブッシュ第43代大統領は、被災地に急行することなくワシントンに帰り、救援活動も遅れた結果、支持率が急降下、結局、二度と回復することなく退陣している。

 一方、2012年の「サンディ」(死者233人、損害総額700億ドル)がニュージャージー州に上陸した際、急遽被災地に駆けつけ、クリス・クリスティー州知事(共和党)に全面協力したバラク・オバマ第44代大統領は共和党のミット・ロムニー候補を破って再選を果たしている。

 また、ドナルド・トランプ大統領(当時)は2017年、米準州プエルトリコを襲った「マリア」(死者約3000人、損害総額944億ドル)への救援・支援を一切無視。

 議会が承認した救援予算(200億ドル)を留保、「(民主党支配の)プエルトリコなどには一銭も出さぬ」姿勢を貫いた。

(その後、プエルトリコ人14万人が難民扱いで激戦州・ペンシルベニア州に移住している。当然反トランプ派である)

whyy.org/puerto-rican-community-in-pa-displaced-by-hurricane-maria-eager-to-vote-in-2020/

vox.com/trump-hurricane-helene-fema-lies-debunked

先手を打ったバイデン・ハリス政権

 今回、バイデン大統領はFEMAを通じてハリケーンの接近に備えて700万人以上に避難命令を出し、10月9日のハリケーン上陸前に約300の避難所に5万5000人以上が避難した。

「カテゴリー4」の「へリーン」による死者数は239人に上り、FEMAは、第1陣として1400人の救援隊を現地に派遣、さらに後続の捜査・救援チームを7つ編成した。

 救急車400台、ヘリコプター20機、給水車60台、食糧2000人分、水4000万リットルなどが急送された。

 超強力な風雨をもたらしている「ミルトン」の襲来に備え、多くの住民に避難勧告が出されたが、約1万人の被災者を受け入れる態勢を整えていた大リーグ、レイズの本拠地トロピカーナフィールドの屋根が吹き飛ばされる被害があった。