使い方によっては殉教テロリストをも大量に養成できる

 人間のように疲れないAIは否定せず、必ず応答する。共感し、興味を示してくれる究極の共感装置なのだ。心理学では「感情ミラーリング」と呼ばれる。SNS依存と同じ仕組みで脳内で報酬系ドーパミンが放出される。AIは人間より「理想的な対話相手」なのだ。

 AI依存は便利なツール、感情を共有できる会話相手、恋愛的感情に発展する心理的パートナーという3段階で進行する。またAI最大の特徴は確信に満ちた文章だ。人間の脳は意味のある物語を作る能力があるため、知的な人ほど虚構を合理化してしまう落とし穴にハマりやすい。

 AIは拒絶しない、評価しない、常に応答する。それがAI依存を深めるカギだ。利用者との間で最も強い心理的結合である恋愛感情を育む可能性がある。AI依存は神への宗教的従属に近くなる恐れもある。使い方によっては殉教テロリストをも大量に養成できてしまうリスクがある。

 今回の事件が衝撃的なのは、AIは偽情報の大量生産・拡散ツールにとどまらず、新しいタイプの危険を孕んでいることを浮き彫りにしたからだ。いま青少年のSNS依存と自死の問題に注目が集まるが、AIが持つ潜在的な破壊力はそれを上回るのは明白だ。

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【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。