「ニデック」改称の追い風は続かず、株価重視の副作用が表面化

 しかし、社名変更がまったく企業価値向上につながらないケースもままある。

 今回取り上げたクラシルもLOIVEも社名変更は株価にはつながっていない。パナソニックもそう。社名変更当日(2008年10月1日)の株価は1841円。それが今では2537円(2026年2月27日)。だから37.8%も伸びている。

 しかし、日経平均が1万1314円から5万8850円へと5倍以上に上昇したことを考えるとあまりにも物足りない。しかもパナソニックが社名変更した2008年度決算の売上高が7兆7655億円だったのに、2026年3月期の売上予想は7兆7000億円。表面上、まったく成長していないことが分かる。

 そして最近の社名変更で、最もうまくいかなかったのがニデックだ。創業者・永守重信氏の積極的なM&A戦略を進めてきた日本電産は2023年に社名を変更した。世界戦略を意識したものだった。

 当時の株価は3400円程度(調整後)。1年後には4000円前後まで株価を上げたが、その後は右肩下がり。永守氏は社名変更の半年前、自らがスカウトした後任社長を株価不振を理由に更迭した過去がある。

 それだけ株価にこだわっていたからか、高収益を社内に厳命。その結果、不適切会計疑惑が第三者委員会の調査対象となり、永守氏は昨年、代表取締役を辞任。そして、今年の2月26日には名誉会長も辞任した。

ニデック創業者の永守重信氏(2023年撮影、写真:共同通信社)

 その影響もあり、直近の株価(2026年2月27日)は2462円。ニデック誕生時の株価に遠く及ばない。見せかけの企業価値増大を図って墓穴を掘った典型例だ。

 光もあれば影もある社名変更。俯瞰すると、パターン1の企業意思の表示型のほうが、株価に結びついている。方針を明確にしてそこに向かって突き進む。そのシグナルが市場に評価されれば株価は上昇する。

 その一方でトレンドに乗る形で安易に社名変更した場合はうまくいかない。これは1990年当時、突然CI(コーポレート・アイデンティティ)ブームが起き、社名変更やロゴマークの刷新が相次いだものの、基本的なコンセプトがはっきりしなかったところはうまくいかなかったこととの相似形だ。

 結局、問われるのは社名変更によって会社をどう変え、世の中にどうインパクトを与えるかという経営者の覚悟なのだろう。