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かつて「弁当のおかず」や「保存食」として脇役だった冷凍食品が、いまや家庭の食卓を支える主役へと躍進している。スーパーでは売り場面積の拡大が進み、和洋中からスイーツ、弁当までフルラインで展開。コンビニやドラッグストアも相次ぎ参入し、冷凍食品は利便性と満足度を兼ね備えた“生活インフラ”として定着しつつある。市場拡大の背景には、「幸福感」が隠れていると流通科学大学商学部教授の白鳥和生氏は指摘する。
「冷凍食品=日常インフラ」時代の到来
スーパーマーケットに足を運べば、その変化は一目瞭然だ。冷凍食品の売り場は、かつての「弁当のおかず」「いざというときの保存食」が並ぶ脇役的なポジションから、いまや家庭の中心を担う“主役”へと格上げされている。
売り場の面積は拡張を続け、ストッカー(保管庫)の台数も倍増し、取り扱う商品も和洋中にスイーツまでフルライン化。調理の手間を省きながらも、満足度の高い食事体験を提供する冷凍食品は、コスパ・タイパ・安心・満足を全て備えた「生活インフラ」として、現代の食卓に定着しつつある。
背景には、時間制約と家計制約の二重の負担がある。共働きや単身居住の増加で「手軽に、ちゃんとおいしく、安心して食べられる」商品の必要性が高まる中、冷凍食品は利便性と満足感のバランスにおいて最適解となっているからだ。
日本冷凍食品協会が2025年2月に実施した調査によると、利用頻度が1年前と比べて「増えた」人が21.7%だった。増えた理由(複数回答)は「調理が簡単で便利だから」が男女共に7割を超えた。
また、冷凍食品は調味料やインスタント食品といった他の加工食品に比べても粗利益率が高い傾向にあり、小売業にとっては“稼げるカテゴリー”でもある。スーパーマーケットやドラッグストアが冷凍食品売り場に注力するのは、単に需要の増加だけでなく、経済合理性に裏打ちされた戦略でもある。
「冷たい食品」から「温かい暮らしの担い手」へ。その変化は、生活者の悩みに向き合う「商品のイノベーション」として高く評価されるべき現象だ。






