「電工」から「半導体」の主役へ、レゾナックが仕掛けた企業価値の再定義

 そして3つ目のパターンが海外市場を意識してのものだ。

 日本最大のエネルギー関連企業INPEX。5年前まで社名は国際石油開発帝石だった。帝国石油と国際石油開発が合併したことで社名に「石」が2つも入る不格好な社名となった。ただし国際石油開発は以前から海外でINPEXとして知られており、これを正式社名として採用した。

国際石油開発帝石のロゴマーク(2020年撮影、写真:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)
INPEXの看板・ロゴ(2025年撮影、写真:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)

 また2008年に松下電器産業が社名変更したパナソニック(現パナソニックグループ)もその一例。パターン2のブランド名との統一でもあるが、その背景には海外での知名度の低さを補う狙いがあった。

2008年9月30日、松下電器産業からパナソニックへの社名変更に先立ち、運び込まれる新社名の銘板(写真:共同通信社)

 以上、3つのパターンを見てきたが、そのすべてに共通するのが社名変更によって企業価値を上げるということだ。

 企業価値の根本は業績によるが、加えて企業の将来性、さらには就職人気などが加味される。社名変更で今後の企業方針も明確にし、さらには古い社名を捨てることで人材が採用しやすくなれば、企業価値はアップする。

 その意味で、最近の社名変更の最大の成功例と言われているのが、レゾナック・ホールディングスだ。

 社名だけ聞くと何の会社かまったく分からないが、旧社名は昭和電工。関電工などの電気工事会社にも間違えられそうだが、化学業界の名門企業である。昔は電気化学技術を用いて化学製品を製造するメーカーの社名に「電工」はよく採用されていた。

 しかし「昭和」も「電工」もあまりに古い。しかも化学メーカーは素材産業であるがため市況の影響を受けやすく、これまで何度も浮沈を繰り返していた。昭和電工はそこから脱却しようと石油化学の比率を落とし、半導体・電子材料メーカーへの転身を図ってきた。

 さらには日立製作所の子会社で、半導体チップのパッケージ材料で圧倒的シェアを持つ日立化成を買収し、2023年1月1日に両社が合併してレゾナックが誕生した。

レゾナックの看板・ロゴ(2026年撮影、写真:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)

 社名変更直前、2022年12月30日の株価は2020円。変更後もしばらく株価は動かなかったが、半導体の需要が高まるとともに株価は急騰。2026年2月27日のレゾナック・ホールディングスの終値は1万1930円なので、実に5倍以上だ。

 レゾナックに限らず社名変更後、株価が上昇する例は多い。インフロニアは変更後、株価は約2倍になった。TOPPANは脱印刷業を掲げ凸版印刷から変わった社名変更2年半で株価は5割上がった。一説には変更後の上昇率は15%前後になるという。