対中貿易収支の天井の引き上げは至難の業

 ロシアと中国の貿易は、現物による決済や暗号資産による決済も行われているようだが、基本的には人民元で決済されていると考えられる。少なくともロシアからすれば、流動性に富んだ外貨が欲しいわけであるから、中国向けの輸出を強化し、人民元を獲得したいところだ。しかし現実には、稼いだ人民元で不足するモノを輸入し続けている。

 つまり、ロシアは対中貿易収支において“天井”を抱えている。この天井を引き上げるためには、ロシアが中国から輸入しているモノの量を減らす必要がある。そのためには代替ルートを開拓するか、あるいは自国での生産を強化するか、その両方をバランスよく進めなければならない。ただし、いずれの選択も多大な困難を伴う。

 世界の工場とも言われる中国以外から、ロシアが必要な民需向けのモノを輸入することは極めて難しい。かつてのように欧州から輸入する目途は立たないし、米国からの輸入も非現実的だ。インドやトルコから輸入できるモノにも限度があるため、超長期ではともかくとして、短中期的に中国に代わる代替ルートを開拓することは非現実的だ。

 またウクライナとの戦争は膠着状態にあるが、一方でこのことは、軍需の縮小が見込めないということでもある。また、軍需で景気をけん引してきた以上、軍需を段階的かつ戦略的に縮小していかないと、景気に対して強い下押し効果が生じることになる。ゆえに自国で民需向けのモノの生産を増やすという選択肢も、非現実的となってしまう。

 こう整理すると、ロシアが対中貿易収支の天井を引き上げることは容易でない。ゆえに、ロシアは対人民元で一定のルーブル高を目指す必要がある。2026年に入って中国が米債を売却し、米ドルでの人民元高を容認しているが、ルーブルもこの動きに追随しているのは、ルーブルのアンカー通貨が事実上、人民元になったことの証左と言えよう。