財政規律はいま生きている国民の資産を守るもの

 したがって、政府の債務残高の対名目GDP比率が、長期的に際限なく拡大していくという予想のもとでは、積極的に国債を購入するのは難しい。その結果として生じるのが、国債金利の上昇である。

 それに伴い、すでに発行されている低クーポンの国債の価格は低下する。場合によっては、短期間で既存の国債の価値が大きく毀損することもあり得る。

国債を購入した投資家が受け取る利息のこと

 こうした事態を防ぐための財政規律は、単に将来世代のための倫理ではない。自分では国債を持っていない国民も、金融機関などを通じて間接的に保有している。財政規律は、いま生きている国民の金融資産の価値を守るためのものでもある。

 現在の長期金利の上昇には、インフレ率の上昇が大きく影響していると考えられる。しかし、それだけでなく、将来、国が借金を返せなくなるかもしれないという不安が、長期金利を押し上げている部分があるとすれば、それは注意すべき兆候である。

 財政の健全性を考える際、日本には災害、とりわけ地震のリスクが高いことも忘れてはいけない。今後、超長期国債が対象とする20年、30年、40年という長い時間の間に、大規模な災害が発生する可能性が高いことは、政府自身が公表している。南海トラフ地震や首都圏直下地震が発生した場合、その経済被害は、阪神・淡路大震災や東日本大震災をはるかに上回ると予想されている。

 そのような緊急事態においても、十分な復興予算を編成できるだけの国債発行余地を確保しておく必要があることは言うまでもない。これは、建物の耐震構造を強化しておくことと同じである。