台数が限られる新型防空兵器

 では、ミサイル開発を進めている北朝鮮の防空の実態はどうなのか。

 北朝鮮は、ロシア製「S-300」そっくりの「KN-06(ポンゲ5)」防空ミサイルを2017年から運用を開始したという。その後も、その改良型の実験を継続的に行ってきた。

 2025年11月にロシアの「S-400」、「S-500」と外観がそっくりの防空ミサイル発射機が、航空隊創設80周年記念式典に展示された。

 おそらく、ロシアからS-400やS-500の技術供与を受け、実験をしていると考えられる。

図2 防空兵器イメージ図 左:S-400 右:S-500

 北朝鮮が公表する写真などを継続的に見ていると、それらの防空ミサイルシステム(ミサイル発射機、監視・射撃管制レーダーや射撃管制システム)がロシア製とほぼ同じであることが分かる。

 このことから、北朝鮮の防空兵器はロシア製を基本とし、発射機の一部分を北朝鮮が改造しているとみてよいだろう。

 北朝鮮が実際に保有しているとされるロシア製S-300/400/500シリーズの防空兵器は、実験が終了したS-300の1セットのみで、他は実験中のものだけだとみられる。

北朝鮮は大部分が旧式の防空兵器

「ミリタリーバランス2025」によると、北朝鮮が現在保有する防空兵器は、長中射程の「SA-2」(射程45キロ)約180基、「SA-3」(射程35キロ)約20基、「SA-5」(射程60~300キロ)約10基である。

図3 北朝鮮が現在保有している各種防空ミサイル(イメージ図)

 北朝鮮が保有するこれらのミサイルは、旧ソ連で1960年頃から1970年頃の間に運用が開始され、北朝鮮には1980年頃から、SA-2、SA-3/5の順で逐次供与されてきたものだ。

 これらは50年以上も前に運用開始されたものであり、現代の戦闘機や巡航ミサイルとの対空戦闘では時代遅れになっているとみられる。

 軍事専門家の間ではレーダーの監視能力の低さ、レーダーのミサイル誘導能力の問題が指摘され、ミサイル自体が捜索・追随する能力の低さ、戦闘機の速度と動きの変化を追えない性能、電子戦に弱いという評価を受けている。

 この10年ほどを考えただけでも電子技術は長足の進歩を遂げており、常識的に考えても時代遅れになっているのは間違いない。

図4 北朝鮮が考えていると想像される防空能力(イメージ)


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 さらに、北朝鮮は新型のレーダー付き短距離防空ミサイル(携帯対空ミサイルを除く)をほとんど保有していないようだ。

 北朝鮮が保有できていないとみられている理由は、ロシアがウクライナ戦争でウクライナに防空兵器を大量に破壊されている状況からみて、北朝鮮に提供できるほどの余裕がないのは明らかだからである。