利点:迅速な決断とメッセージの一貫性

 集中型モデルには、明確な利点がある。

 第1に、意思決定が速い。官僚機構を経由しないため、停戦案や交渉の立ち上げが迅速に進む。

 第2に、トップ大統領の意図がブレない。側近が「トランプの世界観」を理解しているため、政策メッセージが統一されやすい。

 第3に、交渉の柔軟性が高い。ウィトコフ氏のような人物は、公式ルートに縛られず、非公式・非伝統的な交渉を展開できる。

 これは、信長の黒母衣衆、秀吉の奉行衆、ナポレオンの参謀総長といった、歴史上の権力者が用いた「側近による機動的運用」に近い。

 こうした利点は、側近集中型モデルが単なる混乱ではなく、一定の合理性を備えた統治スタイルであることを示している。

弊害:情報の偏りと判断の硬直化

 実は、第2期政権でも国家安全保障体制の安定性をめぐる揺らぎは続いている。

 例えば第2期政権発足後間もない2025年春には、国家安全保障補佐官を務めていたマイク・ウォルツ氏が事実上更迭され、後任が正式決定するまでの間、マルコ・ルビオ国務長官が暫定的に同職を兼務する異例の人事が報じられた。

 国家安全保障補佐官という政権中枢ポストでのこうした入れ替えは、第2期においてもNSC(国家安全保障会議)運営の不安定さ、あるいは側近主導色の強さを示す一例といえるだろう(Time誌報道、2026年)。

 また、集中型モデルには構造的なリスクもある。

 第1に、情報の偏り。

 側近が少数になると、トップに届く情報が「選別されたもの」だけになる。歴史上、これは必ず問題を生む。

●信長:光秀の不満を読み違えた
●秀吉:朝鮮出兵で暴走
●ナポレオン:ロシア遠征で判断を誤る

 トランプ大統領も同じ構造を抱える。

 第2に、官僚機構の反発。

 正式な政策決定プロセスを飛ばし、国務省・国防総省・情報機関を軽視したことで、官僚機構との摩擦と不信が蓄積した。

 省庁横断の合意形成は機能せず、政策は「大統領の耳元にいる人物」に左右される構造が強まった。

 第3に、特命ルートの暴走。

 ウィトコフ氏のような特命型の側近は透明性が低く、制度的な監視も及びにくい。

 一部報道では、ロシア側が関与した非公式のノンペーパーが交渉過程で参照されたとされ、外部からはその扱いをめぐって議論が出ている。

 第4に、トップの気分に左右されやすい。

 集中型モデルは、トップの発言やSNSが政策を左右するという弱点を持つ。