歴史的側近政治の文脈に位置づける
トランプ大統領の側近政治は突飛に見えるが、歴史的観点では異例ではない。強い個性を持つリーダーが制度よりも人物を重視し、意思決定を側近に集中させる構造は、繰り返し現れてきた。
例えば、織田信長が能力主義で家臣団を入れ替え、豊臣秀吉が自らの感覚を理解する奉行衆を固め、ナポレオン・ボナパルトが参謀総長に権限を集中させたように、強力なリーダーほど制度より側近ネットワークを重視する傾向がある。
第1期トランプ政権の混乱は、こうした側近政治が形成される過程で生じた「過渡期の揺らぎ」だったと言えよう。
トランプ大統領は、自らの感覚・世界観・スピード感に合う人物だけを残し、合わない者を排除した。制度の崩壊は、側近政治が固まる前段階としての「ふるい分け」でもあった。
トランプ大統領がインターエージェンシーを軽視した背景には、不動産交渉で培った「ディール型リーダーシップ」に原点がありそうである。
直感と瞬発力を重視する文化は、文書と合意形成を積み上げるインターエージェンシーの思想とは根本的に相容れない。
制度より人、プロセスより耳元の助言を信じるというトランプ大統領の個性が、制度としての意思決定プロセスを空洞化させたのではないか。
トランプ2期政権の意思決定構造
第2期トランプ政権では、第1期政権での「ふるい分け」を経て、意思決定はさらに側近へと集中した。
官僚機構への不信はむしろ強まり、制度的プロセスよりも、大統領の意図を即座に理解し、ためらわず実行に移せる人物が重用されるようになった。
その結果、政策形成の流れは「制度→側近」ではなく、「側近→制度」へと逆転した。
まず側近ネットワークの中で方向性が固まり、その後に官僚機構へ「事後的に落とす」形で政策が動く。
これは、インターエージェンシーが前提としてきた「合意形成→実行」というプロセスとは根本的に異なる。
2期政権の統治は、1期政権の混乱を経て形成された「側近集中型統治」の完成形だと言えよう。制度は補助線に退き、政策は「大統領の耳元にいる人物」が握る構造へと収斂したように見える。