金融市場の関心事はいずれ給付付き税額控除の財源問題に
高市首相は食料品消費減税を総理としての悲願と言及したが、さらなる悲願といえるのは給付付き税額控除の導入だ。高市首相は持論として5年前に執筆した著書でも掲げていた。2月9日の総裁会見でも、食料品消費減税を「改革の本丸である給付付き税額控除実施までの2年間に限ったつなぎ」と位置付けている。
もともと国民会議は社会保障改革を議論する場として設置の検討が進んでおり、最初の課題として給付付き税額控除の制度設計が想定されていた。消費減税を議題に加える方向となっているのは、まさに給付付き税額控除導入への経過措置となるためだ。
衆院解散前、国民会議には自民党、日本維新の会の両与党のほか、立憲民主党、公明党が参加する方針であったほか、国民民主党も参加を検討していた模様だ。中道改革連合も含め、これらの政党を中心に議論が進むだろう。
この2年間の食料品消費減税について、立憲民主党(および中道改革連合)は賛成する可能性が高い。2年間の食料品消費減税ののちに給付付き税額控除へ移行する案は、もともと2025年の参院選で立憲民主党が公約に掲げていたためだ。
2026年の衆院選で中道改革連合は恒久的な食料品消費減税を公約に掲げたが、2年間の時限措置とする与党案と親和性は高い。両与党、および衆参両院の野党第一党の公約が近いため、食料品の消費減税は実施に向けて議論が進みやすい。
もっとも、食料品消費減税が2年間の時限措置で終了したとしても、金融市場では、恒久措置として実施される給付付き税額控除の財源問題に関心が移ることになろう。
なお、国民民主党はインボイス制度の廃止を念頭に一律5%への減税を掲げており、与党案からは遠い。現時点で不透明だが、法人増税を財源に掲げる参政党が国民会議に参加するか否かも注目される。
国民会議で中間とりまとめが行われる予定の夏前(6月前後?)に、高市政権は同時並行で重要な財政運営方針を決める。
まず、例年6月頃に閣議決定される骨太方針が注目される。財政健全化目標が、プライマリーバランスの黒字化から、政府債務残高対GDP比の引き下げを重視する方針へ正式に移行する見込みだ。
2月9日の総裁会見でも、高市首相は「債務残高対GDP比を安定的に引き下げていくということを通じて、財政の持続可能性を実現する。マーケットからの信認を確保していく」と改めて言及した。
巷間では、政府債務残高対GDP比を引き下げるには名目成長率が金利を上回っていればよいとの見方があるが、一部で誤解が含まれている可能性がある。名目成長率と金利の大小関係も重要だが、同時にプライマリーバランスも重要で、両者のバランス次第で政府債務残高対GDP比が拡大するか縮小するか決まる。
消費減税の財源問題が金融市場で注目されているのもこのためだ。財源の確保無しに消費減税が実施されれば、プライマリーバランスが悪化するのみならず、金利にも上昇圧力がかかり、両面で政府債務残高対GDP比に拡大圧力がかかる点に注意する必要がある。
このため、メインの財政健全化目標が政府債務残高対GDP比引き下げに移行するとしても、プライマリーバランスへの一定の配慮は必要であろう。
高市政権は、プライマリーバランスを単年度で黒字化する目標から、複数年度で収支を確認する方針へ移行する模様だ。すなわち、プライマリーバランス目標を完全撤廃するわけではない。金融市場にも配慮した現実的な方針が採られそうだ。