物価高は収まるのか、悪化するのか、どっちなんだい!(写真:Nobuyuki_Yoshikawa/イメージマート)
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(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)

 巷間では、GDPギャップがゼロ近傍で推移、人手不足など供給制約が取り沙汰される中、物価高対策がかえって物価高をもたらしかねないとの指摘もみられる。一理あるものの、実際の消費者物価への影響はどうなのであろうか?

 高市政権は11月21日に『「強い経済」を実現する総合経済対策』を閣議決定した。総合経済対策の財源を裏付ける2025年度補正予算案を28日に閣議決定、臨時国会へ提出し、年内の成立を目指す方針だ。

 与党である自民党と日本維新の会の議席数は、衆参両院とも過半数を割り込んでいるが、主要野党の賛成を得られそうだ。自民党の小林政調会長は、今回の経済対策には公明党や立憲民主党からの要望を反映したと説明している。

 高市政権が策定した総合経済対策の「事業規模」は42.8兆円程度だ。昨年に石破政権が策定した総合経済対策の「事業規模」の39.0兆円程度を上回る。

「事業規模」とは、国・地方の歳出や財政投融資、さらに民間投資分等も合わせた金額を示すが、定義がやや曖昧であり、必ずしも時系列比較に適さない。過去には、既に盛り込まれた経済対策が重複して計上されるケースや、税収減想定が盛り込まれるケースもあった。

 経済対策の規模を時系列で比較しやすいのは、国の一般会計補正予算で計上される追加歳出の金額だ。従来より「国費」と呼ばれてきた。2023年度に岸田政権が計上した13.1兆円程度を底として、2024年度の石破政権では13.9兆円程度に小幅ながら拡大し、2025年度の高市政権では17.7兆円程度へと一段と膨らんでいる。

 2023年頃からGDPギャップがゼロ近傍まで戻るなど経済活動がほぼ正常化する中、2024年および2025年の骨太方針では歳出構造の平時化が明記されたものの、先送りとなっている。

 石破政権は、衆院選で補正予算の増額を掲げたことで、前年度を小幅に上回る規模に設定した。高市政権は、自民党総裁選で積極財政を掲げたことで、前年度をさらに上回る規模に設定している。