1ドル160円の円安になれば話は別

 ただし、危機管理投資の促進などは、資材価格など企業物価を通じて、間接的に消費者物価の上昇をもたらす可能性がある。また、総合経済対策を一因とした財政悪化懸念により、円安が進行している。仮に2026年中に1ドル160円程度の円安が継続すれば、物価押し下げ効果よりも物価押し上げ効果の方が上回る可能性がある。

 無論、円相場の変動要因は様々にあるものの、現時点では日本財政の行方が市場の関心を集めている。2026年度当初予算編成など、高市政権による財政運営のスタンスがどうなるか注目されよう。

【宮前 耕也(みやまえ こうや)】
SMBC日興証券㈱日本担当シニアエコノミスト
 1979年生まれ、大阪府出身。1997年に私立清風南海高等学校を卒業。2002年に東京大学経済学部を卒業後、大阪ガス㈱入社。2006年に財務省へ出向、大臣官房総合政策課調査員として日本経済、財政、エネルギー市場の分析に従事。2008年に野村證券㈱入社、債券アナリスト兼エコノミストとして日本経済、金融政策の分析に従事。2011年にSMBC日興証券㈱入社。エコノミスト、シニア財政アナリスト等を経て現職。
 著書に、『アベノミクス2020-人口、財政、エネルギー』(エネルギーフォーラム社、単著)、『図説 日本の財政(平成18年度版)』および『図説 日本の財政(平成19年度版)』(東洋経済新報社、分担執筆)がある。