推進しそうな消費減税に漂う恒久化の懸念
消費減税について、自民党の公約では「飲食料品は、2年間に限り消費税の対象としないことについて、今後『国民会議』において、財源やスケジュールの在り方など、実現に向けた検討を加速」すると記載された。
高市首相は2月9日の総裁会見で、この公約通りに消費減税を実現する方針を改めて示した。片山財務相は2月10日の記者会見で、高市首相は「ぶれない」と強調、国民に約束した消費減税について「真摯に実行を考えなくてはならない」と述べた。
衆院選の期間中、巷間では、高市首相の消費減税を巡る発言がぶれていると受け止め、実現の可能性が低いとみる向きもあった。確かに、内閣総理大臣としては実施を目指すと述べる一方、自民党総裁としては検討を加速すると述べるなど、積極的な姿勢と消極的な姿勢が混在しているようにみえたが、これは高市首相が総理と総裁の立場を使い分けたためであろう。
衆院選前に自民党内で消費減税のコンセンサスを必ずしも得ていなかったため、党内の慎重派に配慮したためと考えられる。だが、衆院選の大勝を受けて、自民党内では高市首相の悲願を尊重し、公約に沿って消費減税を推進する動きが強まろう。
消費減税の時期について、高市首相は1月26日の討論会で、国民会議が夏までに結論を出せば、秋の臨時国会に税制改正法案を提出できるとの段取りを示した上で、「総理としては2026年度内の実施を目指す」と述べた。2月9日の総裁会見では、「少なくとも夏前には国民会議で中間とりまとめを行いたい」と示している。
どのような制度設計となるか次第だが、現時点では2026年度内(例えば2027年1月)に間に合わせるのはかなりタイトなスケジュールとみられる。現実的には、2027年度からの実施を目指すことになるのではないか。
消費減税の財源について、高市首相は2月9日の総裁会見で「2年間に限り特例公債に頼らないということを前提」として、「補助金や租税特別措置の見直し、税外収入などにより2年分の財源を確保」する方針を示した。
2026年度当初予算に基づいて試算すれば、食料品の消費減税により、国税分と地方税分を合わせて年間5.3兆円程度の税収が減少する。2年間の減税なら10兆円超の財源が必要となる。
2年間であれば、補助金や租税特別措置の見直し、税外収入、さらには従来補正予算などで一時的な財源として活用されてきた税収上振れ分も含めれば、確保することは可能だろう。問題は、食料品消費減税が当初時限措置として導入されても、事実上恒久化する可能性がある点だ。
木原官房長官は、引き下げた消費税率を元に戻すかどうかは、その時点の経済状況を見て判断すべきと1月26日に言及、いわゆる景気条項の導入を示唆した。高市首相が範とする安倍政権下では、消費増税延期の信を国政選挙で問うたことが2度ある。
今の文脈でいえば、食料品の消費減税終了(すなわち増税)の延期が国政選挙の争点になる可能性は十分にある。食料品増税延期の過程で、なし崩し的に赤字国債発行に頼るという展開になる可能性もある。
いずれにせよ、金融市場では、消費減税が恒久化する可能性、そして恒久化する場合の財源の問題に関心を持っているとみられる。財源の確保がないまま食料品消費減税が恒久化すれば、プライマリーバランスの黒字化は10年程度遅れる見込みだ。金利動向次第では、政府債務残高対GDP比が上昇傾向へ転じる可能性がある。