「長く働くほど稼げる」仕組みが生産性を殺す、日本企業を蝕む“生活残業”の病理

 骨太方針2026に向けた経済財政諮問会議の議論はすでに始まっていますが、そこでも労働時間の長さと経済成長との関連を感じさせる指摘が見られます。

 確かに、スーパーのレジ打ちや製造業務、介護職やドライバーなど取り組むべき業務を着実に遂行することで成果を積み上げやすい職種は労働時間の長さと成果が比例する傾向にあります。そのため給与体系も、長く働けば給与も増える時間連動型になっています。

 長く働くほど成果も増えるのであれば、会社としては社員にできるだけたくさん働いてもらった方が業績を上げられます。結果、経済成長にもつながりそうです。労働時間規制の緩和が取り沙汰される背景には、そんな思惑も見え隠れします。

 しかしながら、矛盾も潜んでいます。長く働いた方が成果も増えるのは働いている間、社員が仕事に全集中してやり切った場合です。ところが、給与体系が時間連動型になっているため、定時内に頑張って仕事を終わらせると給与は少なくなってしまいます。

 社員が多く稼ごうとするなら、業務ペースを落として遅くまで残業し、休日出勤もした方が理に適っています。お金を稼ぐために長時間働く“生活残業”という言葉さえあります。

 そんなケースを見越した場合、会社は定時内の給与額を下げて残業代も含めて予算内に収まるように人件費計画を立てないと採算が合わなくなります。時間連動型の給与体系は、一見合理的に見えても、時間当たりの生産性を下げやすい仕組みでもあるのです。

 昨年の参議院選挙で、自民党は「働きたい改革」推進という政権公約を掲げていました。しかし、残業なしでも十分な給与額で、仕事を終えれば定時前に帰宅しても満額払われる仕組みだったとしたら、社員はもっと働きたいなどと希望しないように思います。

 では、社員がもっと働きたいと希望するのは生活残業のためだけかというと、そうとも限りません。給与に関係なく、仕事遂行の妨げになるからもっと働きたいと希望する社員もいます。

 クリエイティブ職や企画職などは、長時間連続して仕事に没頭する中でようやく思考がまとまったり、新たな発想が生まれたりすることがあります。逆に、ひらめいたらものの数分ですさまじい成果が出ることもあります。時間連動性が低い職種です。

 それが、良い感じで仕事に集中している時に、労働時間規制を理由に切り上げるよう命じられたら、社員にとっては大きなストレスとなります。

 すでに一部で裁量労働制や高度プロフェッショナル制度などが適用されているように、時間連動性が低い職種については労働時間規制を気にせず働ける方が成果につながり、経済成長にも資するかもしれません。