領土問題と国際法

(1)領土の割譲は国際法違反である。

 米国でいくつかの報道によると、ドナルド・トランプ米大統領は、米アラスカ州アンカレッジのエルメンドルフ・リチャードソン米軍基地で2025年8月15日に開かれた米ロ首脳会談後、ロシアとの和平合意のためにウクライナが東部ドンバス地域の領土をロシアに割譲する必要性を欧州側に伝えたとされる。

 この「領土の割譲」は国際法違反である。

 トランプ氏は、2026年1月8日公開のニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで、自身の「道徳観」が自身の世界的な権力を制限する可能性があると語り、「国際法は必要ない」と付け加えたと報じられている。

 トランプ氏は国際法に従うつもりはないのであろうか。

 伝統的国際法においては、戦争に勝利した結果として戦勝国の欲する和平条件を敗戦国に強制する「権利」として、戦争の終了時点を基準とした現状承認、すなわち、「武力による現状変更」が認められていた。

 しかし、戦争の違法化および武力行使禁止が進展した現代の国際法においては、伝統的な戦争終結方法である、武力による強制の結果としての領域変更または現状の変更を強制する「平和条約の締結」は、違法行為国、被害国にかかわらず、国際違法行為とみなされ無効となり、法的妥当性を有さないとされる。

 領土割譲の国際法上の扱いは、その経緯に依存し、武力による征服を伴う割譲は国際法違反とされる。

 しかし、当事国間の平和的かつ自由な合意に基づいて行われる場合は、割譲が認められることもある。

 例えば、 日本もサンフランシスコ平和条約に基づき、北千島列島や樺太南部などの権利を放棄した事例がある。ただし、用語としては割譲でなく放棄が使用されている。

(2)「民族自決権に基づく住民投票」も国際法違反

 プーチン氏は民族自決権という詭弁を弄すると考えられる。

 ロシアはウクライナ東・南部4州の占領地域で「民族自決権に基づいた住民投票」を実施し、その「結果」を踏まえて4州の併合を宣言した。

 国家に関わる国際原則として、「領土保全」と「民族自決」という対立する2つの概念が長く併存してきた。

 歴史的には、基本的に領土保全の原則の方が優位に立ってきたが、例外的に第1次世界大戦の後、第2次世界大戦の後および冷戦の後には、民族自決の原則が優位になった時期がある。

 しかし、今日では国際慣習法上、明確に自決権に基づく独立が認められるのは、第1に植民地からの独立と、第2に外国の征服、支配および搾取からの独立という2つの場合であるとされる。

 これらの場合には領土保全原則と民族自決原則は一致するものと考えられるからである。

 新疆ウイグル自治区やチベット自治区、台湾問題を抱える中国は「民族自決権」に大反対するであろう。