ドル円の見通し
トランプ政権の一連の外交政策への拒否反応もあって、足元では米ドルが主要通貨に対して弱含みの傾向を見せています。
しかし、中長期的な視点に立つと、米ドルに対する見方は大きく変わってきます。というのも、①トランプ関税による輸入抑制と自国への産業回帰、②2国間ディールの結果獲得した海外からの巨額の対米直接投資が流れ込むことが期待されること、そして、③自国の経済力強化に邁進する米国と財政上の難題に直面する周辺国との国力の差が拡大する可能性を勘案すると、足元の一時的な混乱にともなう米ドルの調整局面を経たのちは、ドル円相場は米ドルの堅調推移となる可能性が高いように思われます。

現在は行き場を失い金などに流れ込んでいる逃避資金が、事態の沈静化を見越して次の落ち着きどころを探る展開になると、為替市場での米ドルの底力が再認識されるのではないでしょうか。
実物資産投資への構造的な追い風
世界最大の政府系ファンドであるノルウェー政府年金基金の専門家委員会は、1月26日に地政学リスクへの対応力を高める必要があると報告書で指摘しましたが、こうした新たな環境に対応しようとする動きはすでに金融市場で顕著になっています。特に、米国発の地政学リスクの顕在化を恐れた資金が金を始めとする貴金属・実物資産に逃避する動きが強まり、金のスポット価格は足元で1トロイオンス当たり5000ドルの大台を突破して急伸しています。

こうした金融資産から実物資産への資金の動きは、今後も続く可能性が高そうです。ちなみに、一気に逃避資金が向かったことで急騰した金価格の上昇については、トランプ得意のTACO(Trump Always Chickens Out、トランプはいつも妥協する)により米国が最終的には現実的な妥協策をとることで、近い将来に一巡する可能性が高いように思われます。
一方、国家が存続していくために不可欠な、資源・エネルギー、希少金属、食糧、水などは、①地域の大国が戦略物資の独占を目指して利己的な動きを強める一方、②周辺国は独自の権益確保に動かざるを得ず、結果的に需給バランスがタイト化する可能性が高いのではないでしょうか。
加えて、実物資産投資のパフォーマンス面の魅力もさることながら、突発的な地政学リスクが顕在化する局面での安定した収益源として、分散投資の対象としてのニーズが高まっていくことが想定されます。このため、今後も着実な金融資産から実物資産への資金シフトが続く可能性が高いように思われます。