米国株はバブル?(写真:AP/アフロ)
(白木 久史:三井住友DSアセットマネジメント チーフグローバルストラテジスト)
米国株の割高感への警戒感が高まってきました。11月4日にはウォール街の大物経営者たちが相次いで株価の割高感や調整リスクを指摘したことから、米国株は大きく調整する展開となり、翌11月5日のアジア時間には日経平均株価は一時約▲4.7%も急落する場面がみられました。
世界最大の時価総額を誇る米国株は世界の株式市場の主役ともいえる存在ですが、AI関連銘柄を中心に抜群の株高を謳歌する米国株に対して「バブルではないか」との声も上がるようになってきました。果たして、現在の米国株はそんなに割高なのでしょうか。
「伝説のトレーダー」のAI株売り
AI関連株に代表される米国の大手ハイテク株の好調が続いていますが、そんな市場のトレンドに逆張りする「伝説のトレーダー」のAI関連株売りが注目を集めています。
2007年のサブプライム危機の際に「世紀の空売り」を仕掛けて映画のモデルにもなったマイケル・バーリ氏が率いるサイオン・アセット・マネジメントは、AI関連株の代表格ともいうべきエヌビディア株とパランティア・テクノロジーズ株のプットオプション(一定の株価で売る権利)を大量に購入していることを、米国証券取引委員会への報告資料で開示しました。
AIを活用した軍事用途向けデータ解析のトップ企業であるパランティア社は、11月3日に四半期決算を公表しました。それを受けて、これまでの株価の急騰を受けた利食い売りの動きに加えて、この「伝説のトレーダー」による大規模な「弱気ポジション」が報じられたこともあって、好決算にもかかわらず株価は大きく下落することとなりました。
ネットバブル期の水準に迫る米株のPER
市場参加者の多くがこうした「売り仕掛け」に敏感な背景には、米国株の割高感への警戒感がありそうです。というのも、米S&P500種指数の予想株価収益率(PER)は2000年のインターネットバブルの時期の水準に迫る、歴史的な高水準に達しているからです(図表1)。

はたして現在の米国株は、ファンダメンタルズから乖離した「バブル状態」にあるのでしょうか。
米国株の割高感の実像
株価は一株当たり利益(EPS)とPERの掛け算なので、S&P500の予想PERが過去のピーク水準まで上昇してきていることに警戒感を強めるのは、投資家として至極まっとうな反応といってよいでしょう。とはいえ、現在の米国株式市場の状況に目を凝らしていくと、こうした高PERへの単純な警戒感は、重要な点を見逃している可能性がありそうです。