キラキラと「対消滅」して平穏な「無」へ
飯島:後書きの「身の置き場所は家族か」という一行が良い意味で引っ掛かりました。
山田:おっしゃりたいこと、分かりますよ。「散々、美談がどうやと言うてんのに、最後にええ話にしとるやないかい」ってことでしょう(笑)。でも本当の話、僕の場合、地元に戻るとか実家に帰るとか、そういうよりどころが薄いというかない。
東日本大震災の時、母から電話が来て初めて「関東に引っ越してきてたんかい」と知ったくらい疎遠で、兄弟とも何十年も連絡してない。関係性が希薄なんです。
だから「うまくいかへんから地元に戻ろう」みたいな選択肢が、そもそも僕には成立しない。どこに住むか、何を判断材料にするか、その理由が立ちにくい。残るのは妻と娘たちくらいで、娘が生まれて「とりあえず、やることができたから良かった」と思えたほどです。

飯島:最後に、この本で目指した着地点を教えてください。
山田:反対の意見が足りてないから、なるべく発信して正面からぶつけたいですね。キラキラと対消滅して、どっちも消えればええ(笑)。
過度に意味を求めすぎるのって、結局「コスパ」みたいな話になって息苦しくなるでしょう。全部が平穏になった状態が一番いいとするなら、最後は無に近づけたらいい。無駄だった年を無駄だったと言えるくらいの余白が、人間にはたぶん必要なんじゃないかと思います。
髭男爵・山田ルイ53世
兵庫県出身。
お笑いコンビ・髭男爵のツッコミ担当。地元の名門・六甲学院中学に進学するも、中学2年の夏に引きこもりになり中退。約6年の引きこもり生活を経て大検合格。愛媛大学法文学部に入学するも、その後中退し上京、芸人の道へ。現在はラジオパーソナリティを務めるほか、ナレーション、コメンテーター、執筆業、イベントなどでも幅広く活動中。「新潮45」で連載した「一発屋芸人列伝」は「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞した。主な著書に『ヒキコモリ漂流記 完全版』『一発屋芸人の不本意な日常』『パパが貴族』などがある。
飯島 渉琉(いいじま・わたる)
はり師・きゅう師資格取得後、武蔵野大学通信教育部心理学科卒業。2024年から静岡県伊豆市地域おこし協力隊として伊豆市のコミュニティFM局で企画・構成・編集・パーソナリティとして活動中。音声コンテンツ・映像コンテンツ制作に勤しみながら、YouTubeチャンネル「著者が語る」に参画。
