台湾で実績上げるも国内だけでは伸びない鴻海の焦燥
一方、鴻海傘下のフォックストロンはどうか。こちらは同じ台湾の自動車メーカーで日産自動車と関係が深かった裕隆汽車を母体として2020年に発足したばかりの歴史の浅いメーカーだが、2021年には大型の「モデルT」という電動バスを作り、すでに路線バスに導入されている。
鴻海のEVバス「モデルT」(2021年撮影、写真:NNA/共同通信イメージズ)
2024年には全長7mクラスのタウンバス型「モデルU」を発表し、ラインナップ拡充に突き進んでいる。
実用モデルで早速実績を積み重ねているフォックストロンだが、その立場は決して強いとは言えない。
台湾で電動バス市場が急激に立ち上がっているのは、政府が2030年にバスの全電動化という方針を打ち出しているためだが、その台湾で最も強いのはフォックストロンではなく華徳動能科技(RAC Electric Vehicle)。電動バス分野では15年以上の歴史があり、日本でも住友商事を通じて古いディーゼルバスを電動バスとして再生するビジネスを展開している。
次点が成運汽車で、耐久性の高さや超急速充電が可能なことで知られる東芝のチタン酸リチウムイオン電池を採用して評判を高め、シェアを伸ばしている。フォックストロンはあくまで三番手グループなのだ。
需要が限られる台湾の国内市場で上位2社のシェアを奪いにかかるだけでは、ビジネスの広がりは到底望めない。フォックストロンがバスで成長を遂げるには、グローバル市場に早期に打って出ることが必須条件だ。
だが、現実には大きな壁が立ちはだかる。乗合バスは一般に100万km、長距離バスでは100万マイル(160万km)程度の製品寿命が要求される世界。耐久性はもちろんのこと、故障や整備による運休期間がどのくらい短くて済むかなど、顧客となる旅客輸送会社のバスを見る目は非常に厳しい。
現在、電気バスの世界首位は中国のBYDだが、顧客の信頼を得るまでには長い年月を要した。鴻海もこの先無事に実績を積み続けられればいずれ信頼を得られるであろうが、その間に先行メーカーに顧客を囲い込まれてしまうと、それを切り崩すのは容易ではない。
北海道にEVバスを納入する中国BYD(写真:新華社/アフロ)