ベネズエラ沖を航行する石油タンカー(写真:AP/アフロ )
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(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=58ドルから61ドルの間で推移している。新たな供給懸念が浮上したが、地政学リスクへの懸念が薄れたため、原油価格の上値は先週に比べ、2ドルほど低下した。

 まず需給に関する動きをみたい。

中国の原油需要に楽観広がる

 市場が注目したのは、カザフスタンの世界最大規模を誇るテンギス油田の生産停止だ。

 テンギス油田は1月18日、発電所の火災の影響で操業を停止した。このため、カザフスタンの原油生産量は昨年12月(平均)の日量152万バレルから90万バレル程度に減少したとみられている。生産再開は来週以降になる見込みだが、一時的な事象とみなされ、市場での買いは限定的だった。

 市場は中国の昨年の国内総生産(GDP)の発表にも反応した。

 中国政府が19日「昨年のGDP成長率が5%だった」と発表すると、原油需要への楽観的な見方が広がった。

 中国政府によれば、同国の昨年の原油処理量は前年比25万バレル増の日量1475万バレルだった。国有石油大手の能力増強が主な要因だ。今年の原油処理量も昨年同様、日量約25万バレル増加する見通しだとしている。

 中国の原油輸入先にも変化がみられる。

 ロイターは19日「中国はロシア産ウラル原油を増やしており、2023年以来の高水準になっている」と報じた。中国の海上輸送でのロシア産原油の海上輸入量は昨年12月、日量150万バレルを超え、1~11月(平均)の日量120万バレルから急増した。ロシア産原油のディスカウントが進んでいることが要因だ。

 インドがロシア産原油の購入を躊躇(ちゅうちょ)していることが影響している。米国との関係悪化を恐れるインドの昨年12月のウラル原油輸入量は日量93万バレルと昨年の年間平均(同127万バレル)を大きく下回った。

 世界の今年の原油需要の伸びは堅調だとの見方も出ている。

 国際エネルギー機関(IEA)は21日、今年の原油需要は日量93万バレルと伸びると前回予測(同86万バレル増)を上方修正した。ただ、世界の原油市場の供給過剰幅は昨年の日量220万バレルから370万バレルに拡大するとしている。

 次に地政学リスクだが、状況は一進一退だ。