戦力、話題性、経済効果。そのすべてが噛み合った今のMLBは、まさに「史上最高の前夜」に立っている。開幕前からこれほど期待が膨らむシーズンは、そう多くない。
だが、その熱狂の裏側で球界関係者が別の時計を見つめていることは、まだ一般レベルにまでは浸透していない。
オーナーサイドが問題視し始めたFA市場
こうした補強ラッシュの一方で、リーグ内部では別の問題意識が静かに共有されている。それが、FA市場のあり方だ。
近年のMLBでは、スター選手の契約がオフシーズン後半までずれ込むケースが珍しくなくなった。キャンプ直前、あるいは開幕直前まで移籍先が決まらない光景は、もはや恒例となっている。
オーナー側が問題視しているのは、その「長期化」そのものだ。FA市場がだらだらと続くことでオフシーズン序盤の話題性が薄まり、ファンの関心が分散する。補強が一気に進まないためチーム作りの全体像が見えにくくなり、ビジネスとしての効率も落ちる。こうした不満が、リーグ全体で積み重なってきた。
その延長線上に浮上してきたのが、FA契約に一定の期限を設けるという発想だ。MLB機構のロブ・マンフレッドコミッショナーやMLB各球団のオーナーらが“連合”を組む形で、これらを強硬に推し進めようとしている。
MLBコミッショナーのロブ・マンフレッド氏(写真:Craig Thomas/News Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)
市場を「集中開催」することで、話題性を高め、交渉を加速させたい――。経営論として見れば、一見もっともらしい理屈だ。実際に短期間で大型契約が次々と成立すればストーブリーグはイベント性を帯び、注目度も高まる。
しかし、この考え方に対して選手側は強い警戒感を抱いている。