中国共産党が狙う3つの目的達成
第一に、高市政権の台湾政策に対する報復と牽制。第二に、日米欧が進める対中半導体規制への対抗措置としての意味。第三に、デュアルユース分野における中国のサプライチェーン支配力を誇示し、経済安全保障のカードとして使えることを示すことと思えます。
実際、既存の中国との取引が公式に細ることが確定するとなると、日本側は本格的に材料不足から生産調整をしなければならなくなります。ただでさえ買いづらかったトヨタレクサスやアルファードも、納車まで半年から1年以上も待たなければならないことだってあり得るわけであります。要は「逆らうとこうなりますよ」という警告です。
そして、今回出てくる対象品目の拡大については、レアアースの精製技術やリチウム電池向けの素材、太陽光パネルと制御関係部品、さらには工作機械の一部なども視野に入ってくる可能性があります。
中国の両用物項管制清単(管理リスト)は定期的に改訂されていて、それらが忠実に守られているかどうかはともかく、2025年末にも2026年版が公布されたばかりです。リストを見る限りでは、航空宇宙、暗号技術、AI関連のソフトウェアなども管理対象に含まれています。
日本の防衛産業や半導体産業が中国から調達している素材・部品は少なくなく、それらが「軍事転用可能」と認定されれば、いつでも止められる状態になったよ、ということです。
中国が輸出を絞ったことで混乱が起きた事例は、すでにいくつもあります。
記憶に新しいのは2021年末のアドブルー(尿素水)騒動でしょう。私も実家が大変なことになりました。なんか変だなと思ってたくさん買っておいたのに誰かが盗んでいきやがって面倒なことになったんですが、私のことはどうでもいい。
このディーゼル車の排ガス浄化に必要なアドブルーの原料である尿素は、中国が世界生産の3割超を占めていました。中国国内の電力不足と肥料価格高騰を背景に輸出が絞られ、韓国では物流がストップしかけるほどの事態になりました。日本でも一時的な供給不安が広がり、物流業界が慌てたのを覚えている方も多いでしょう。
2010年の尖閣諸島沖漁船衝突事件後には、レアアースの対日輸出が事実上制限されました。中国政府は公式には否定しましたが、数週間にわたって完全に供給がゼロになって往生し、通関での滞留が長期化して日本企業は調達に苦しみました。この経験が、その後のレアアース代替技術開発やリサイクル推進、調達先多様化の動きにつながっています。
今回の措置も短期的には痛みを伴いますが、長期的には中国依存からの脱却を加速させる方向に作用せざるを得ません。こんな不安定な取引先は、たとえ格安なレアメタルの取引相手であっても依存したら大変なことになりますから。