何が該当するかの判断は中国当局に委ねられる

 テクニカルな話ですが、在中国側輸出企業を規制する法的根拠となっているのは、2020年施行の「出口管制法(輸出管制法)」と、2024年10月施行の「両用物項出口管制条例」です。

 クソ面倒くさいけど理解してもらわないと先に進めないので簡単に説明いたしますと、「出口管制法」は軍事転用可能な物資の輸出を国家安全保障の観点から規制する包括的な法律で、米国の輸出管理改革法(ECRA)に対抗する形で整備されました。2024年の条例はその下位規則にあたり、デュアルユース品目の具体的な管理体制を定めています。

 ただ、何だかよく分からないのは、法律で「これは良い」「あれは駄目」と明確に決まってれば「おっ、そうなのだな」となるところ、ドイツの部品会社は良いけどイギリスは駄目とか、杭州の日系工場は良いけど沿海部は駄目とか、そこは「まあ中国ですから」と割り切るにはかなりビッグな適当さがあるところです。

 中国の各税関で駄目なやつリストってのが提示されるんですが、時期や業者によって扱いが変わったり、先週まで輸出が駄目だというので関係先と協力して倉庫保管の手配をしていたら、やっぱり出せそうだとなったりとか、いろんなことが起きるんです。

 そして、今回の措置の特徴は、そこからさらに発展し、公式には特定の品目リストを示していない点にあります。何だかよく分からないというレベルを超えて、もう最初から開示するつもりもないんだろというレベルで何も分かっていません。貿易実務をやる側からするとモノを出していいのかどうかすら分からない、超絶イライラするやつですね。

 で、公告では「すべての両用物項」について、日本の軍事ユーザー・軍事用途・軍事力向上に資する用途への輸出を禁止すると書かれているだけで、何が該当するかの判断は税関ほか各地の中国当局に委ねられています。その「中国当局ってどこよ?」ってことで、日本企業は正月休みが終わった瞬間から公告の内容を確認するために走り回っています。

 これはもう、日本を含む(中国にとっての)外資系企業に対する萎縮効果を狙った設計と見るべきでしょう。日本企業としては、取引のたびに「これは軍事転用可能と判断されないか」を中国側にいちいち確認しなければならず、そのコストと不確実性が重くのしかかります。

 ビジネスを細らせたいなら、禁輸リストを作るより、曖昧な基準で許可制にするほうが効果的なのは間違いありません。ただ、中国はいままでそういう「不安定な取引相手国」と見なされることをすごく嫌っていたので、最終ラインはギリギリ守ることも多かったわけなんですが、ここまでくるとまあ見事に……といった感じです。

 これらの状況から鑑みるに、中国政府(というか中国共産党)が狙っているのは、複合的な目的の達成です。