繁殖干渉が外来種問題に与えるヒント
近縁な2種が出会ったときにどちらが勝つのか、という問題は生態学の重要な問題の1つである。
この問題は、例えば外来侵入種と在来種のどちらが勝つのかという問題に帰着できる。最近、日本に侵入した昆虫だけでもチュウゴクアミガサハゴロモ、クビアカツヤカミキリ、ムネアカハラビロカマキリ、ヒアリ、ツマアカスズメバチ、ツヤハダゴマダラカミキリ、アカボシゴマダラと枚挙にいとまがない。
マメゾウムシの研究結果は、こうした外来種と在来種の性的な相互作用を調べることの重要性を提起している。
また、近縁な2種のどちらが勝つのかという問題は、近縁な2種の分布の問題にも重要なヒントを与える。
近縁な昆虫2種の分布がきっぱり分かれている例はとても多い。前回の記事で書いたアカイエカとチカイエカも互いに生息する場所が違う。しかしなぜ分布が違うのか、なぜ2種が一緒に生息できないのかという点は意外とわかっていない。このような問題も繁殖干渉を調べることで明らかになることが多いだろう。
繁殖干渉はもちろん昆虫だけにとどまらない。植物や魚類、哺乳類など性のある生物であればどの種間でも生じうる。その中には当然、我々人類、ホモサピエンスも含まれる。次回はそのあたりをもう少し掘り下げて考えてみたい。
【参考文献】
◎Chien C, Seiko C, Muto T, et al. (2025). A single domestication origin of adzuki bean in Japan and the evolution of domestication genes. Science 388:eads2871.
Kishi S, Nishida T, Tsubaki Y (2009) Reproductive interference determines persistence and exclusion in species interactions. Journal of Animal Ecology 78:1043–1049.
◎高倉耕一(2018)第1章:繁殖干渉とは.繁殖干渉 理論と実態,名古屋大学出版会.
Utida S (1953) Interspecific competition between two species of bean weevil. Ecology 34:301–307.
◎渡辺直 (1986) 栽培植物の分布拡大に伴う害虫の伝播と植物検疫の意義--特にマメゾウムシ類を中心として. 植物防疫所調査研究報告 22:1–9.
岸茂樹(きし・しげき)
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)上級研究員
愛知県出身。2000年東京大学農学部卒業後、京都大学大学院農学研究科で修士号、博士号取得修了。農研機構上級研究員。専門は昆虫生態学で、農業分野の研究に取り組む。著書に『繁殖干渉-理論と実態-(共著、名古屋大学出版会、2018)』『虫がよろこぶ花図鑑(共著、農文協、2025)』などがある。博士号を取得後、2009年から11年まで広告代理店での勤務も経験。趣味は写真。大学院在学中の2004年にテレビ番組「あいのり」にハカセとして出演。




