なぜヨツモンはアズキゾウに滅ぼされてしまうのか?

 繁殖干渉とは、正しくは「近縁な種間配偶によって生じる干渉型の相互作用」をいう(高倉 2018)。おおまかにいえば、種を超えたオスの求愛や種間交尾による悪影響のことだ。

 既に知っている人も多いかもしれないが、繁殖干渉というと種間交尾や種間交雑のみを考える人も多いが、私はそれ以外の性的な相互作用も非常に重要だと考えている。

 2007年ごろからアズキゾウとヨツモンマメゾウムシ(以下、ヨツモン)の2種を用意していくつかの実験を行った。アズキゾウとヨツモンはさすが貯穀害虫だけあって飼うのはとても簡単だった。2週間から3週間に一度、容器内の成虫をふるって、アズキを交換するだけでよい。実験をするのも簡単ですぐに結果を得られた。

 結果は驚くべきもので、アズキゾウのオスがヨツモンのメスに交尾を迫ることでヨツモンのメスの産卵数が減り、それによってヨツモンが絶滅してしまったのである(Kishi et al. 2009, 図1, 図2)。

図1:アズキゾウムシとヨツモンマメゾウムシのオスとメスをさまざまな組み合わせでシャーレにいれて3日間の産卵数を調べたもの。ヨツモンのメスとアズキゾウのオスの組み合わせのときだけ産卵数が大きく減っている(Kishi et al. 2009 を改変)
◎図2:アズキゾウムシとヨツモンマメゾウムシを同数シャーレに入れて飼い続けたときの個体数(1週間あたりの羽化個体数)の変化(一例のみ示す)。170日ほどでヨツモンマメゾウムシが絶滅する

 この効果は一方的で、ヨツモンのオスがアズキゾウのメスの産卵数を減らすことはなかった。一方、アズキゾウの幼虫とヨツモンの幼虫がアズキのマメの中で出会うとヨツモンが勝ちやすいことは昔から知られていて、この実験に使った2種でも同じ結果が得られた。

 つまりヨツモンは、幼虫どうしの争いでは強いのに、アズキゾウのオスからのみさかいのない求愛を受けて滅びてしまうのだった。

 アズキゾウとヨツモンのどちらかが勝つかを調べた実験は昔から多く調べられていて(例えばUtida 1953)、教科書にも載るほど有名である。

 これらの実験結果はすべて資源をめぐる争いで説明されてきた。つまり2種がエサや空間を奪い合い、その能力が強いほうが勝ち残るのだといわれてきた。しかしこの実験結果からわかったことは、どちらの種が勝ち残るかを決めるのは資源をめぐる争いではなく、異種のオスの求愛とそれによる悪影響だった。