オオスズメバチ(2016年つくば市、著者撮影)
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(岸 茂樹:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 上級研究員)

 これから秋にかけてスズメバチが増えてくる(写真上)。この時期にスズメバチの巣が急激に大きくなるためで、働きバチも増え、人と遭遇する頻度も増える。

 刺傷事故が増えるのもこの時期だ。実際、スズメバチの相談件数は8月から9月が最も多い。草刈りをしていてスズメバチに刺される事例も多いが、マラソン大会などのイベントで参加者が刺されたというニュースも毎年のように聞く。

 スズメバチを含めて、ハチに刺されたことによる死亡者数は毎年約20人が報告されている。例えば、令和5年は21人(うち男性18人、女性3人)となっている(厚生労働省人口動態調査 2023年)。これは野生動物の死因として突出して多い。

 最近クマによる痛ましい事件が起きたばかりだが、クマによる死亡者数は毎年0~数人(令和5年は6人と多く、人身被害も82人に上っている)であることを考えると、スズメバチの危険性はもっと意識されてもよいと思う。

 ハチに刺されて死亡する場合、多くがアナフィラキシーによるものだが、誰がいつアナフィラキシーショックを起こすのかというのは抗体を調べない限りほとんど予測できないので十分に注意してほしい。

 今回の記事では、スズメバチの危険性とその対策の重要性を伝えるため、日本に生息するスズメバチの生態や、外来種ツマアカスズメバチの侵入事例、そして北米でのオオスズメバチ根絶成功事例を紹介する。侵入生物の定着や拡大を防ぐには、初期段階での迅速かつ大規模な対策が重要だ。

 先に注意事項を書いておくと、スズメバチを駆除するときは自分で駆除しようとせず、専門の業者に依頼したほうがよい。ただ、駆除業者から高額の料金を請求される事例も報告されているので不安な場合にはお住まいの地方自治体の窓口を利用するとよいだろう。

 地方自治体の窓口に電話すると複数の業者を紹介してもらえるはずだ。また、もし刺されてしまった場合には毒を絞り出し、流水でよく洗い流した後に軟膏を塗るなどの応急処置をした後、すぐに医療機関を受診してほしい。