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連載:少子化ニッポンに必要な本物の「性」の知識

 2025年11月28日、性的マイノリティー8人が、いまの法制度が同性婚を認めていないことは憲法違反と国を訴えた裁判。

 東京高等裁判所は、同性婚を認めない現行法は合憲との判断を下した。

 その判断について裁判長は、同性カップルの婚姻の自由について「憲法で保障されていない」とした。

 さらに、民法は法律婚について「『夫婦とその子』を基本的な家族の姿として想定している」、「婚姻は(男女)両性の合意のみに基づいて成立」との判断を示し、社会を維持するうえで異性婚だけを保護する現状の制度には合理性があるとした。

 現在、同性カップルは性的マイノリティー(少数派)と呼ばれるが、歴史を振り返れば、マジョリティー(多数派)の都市国家が存在した。

少年愛は市民の義務

 古代ギリシア人はアルファベットを創出し、貨幣を用いて地中海貿易を活発化させ、世界最古の民主政治制度を確立、裁判は市民に開放されていた。

 そのギリシアでは、男道が尊ばれ、女色は重視されなかった。理由は、女性との色恋は青年を柔弱にする、というのだ。

「アレテー」とはギリシア語で秀逸、優等といった意味がある。

 古代ギリシアの著名な人物のほとんどが、兄貴分のエラステース(念兄:ねんじゃ)として、あるいは、アレテーを授けられる弟分エローメノス(寵童:ちょうどう)として、その名を連ねている。

 少年愛は「アレテー」を高める教育指導的な意味が含まれ、性愛のみの範疇を超えた関係性があった。

 それは女性との異性愛による生物的な再生産へと向かう愛とは異なり、少年愛は教育による精神性の再生産へと向かうことを目的とした。

 古代ギリシアで、少年を導き育成すべきエラステースの資質は、知性や知識、また戦士としての気概、強靱な肉体、戦闘技能の優位性、巧みな論弁、高い統率力、優れた道徳性を有することである。

 それらを体現した男子市民をアテナイでは「徳(アレテー)」を持つ人と称した。

 少年愛は代表的なポリス・アテナイで認められた「市民の義務」として、少年たちにアレテーを授ける社会の文化制度としての範型として、高貴な市民の役割とされた。

 運動競技は、戦闘技術の向上を目的とし、オリンピック、ピュティア競技祭、イストミア競技祭、ネメア競技祭などのスポーツの祭典が、ギリシア各地で開催され、参加者は、身体にオリーブ油を纏い、一糸纏わぬ真裸で肉体美を顕示する。

 各地では美少年コンテストが盛んに行われたが、古代ギリシア人はあらゆる手段で男性美を楽しむ方法を追求し、レスリング、ボクシング、総合格闘技などの競技では、アテナイ市民は鍛錬を施された肉体が躍動するさまに熱狂した。

 ペロポンネソス戦争の歴史を記した歴史家トゥキュディデスの『戦史』にはそう綴られている。