スパルタ軍、最強の背景

 軍国主義的政治と尚武を尊ぶ厳格な慣習や規律を定めていた都市国家スパルタは、最強の重装歩兵軍を誇っていた。

 国民皆兵制を敷き、スパルタでもアテナイ同様に、戦士である男性市民の少年愛は、法文化された「市民の義務」だった。

 もし、国家や軍隊が互いに愛し合う男性達で構成されたら、守るべき持ち場を離れたり、武器を打ち捨てたりする姿を、愛する同性に見られるなら、いっそ競い合って勇ましく戦い、前に倒れて討ち死にする名誉を求めることを選ぶだろう。

 そうした恋愛心情を基盤とした統治組織を構成したならば、たとえ少数であっても、危地にて不利な状況でも、仲間を見捨てるような真似はできまい。

 それどころか愛する男の尊敬と賞賛が得られるのであれば、相手が大軍であろうと臆することなく果敢に対峙する勇気が湧き出て、萬軍(ばんぐん)にさえも、うち勝とうとするのではないか。

 紀元前5世紀初頭に勃発したペルシア戦争で、スパルタはアテナイとギリシア同盟軍を結成。共に、ペルシア帝国と戦った。

 その際、主力部隊のスパルタ軍は、数十倍のペルシア軍に奮戦している。また、ギリシア中を巻き込んだペロポネソス戦争では、アテナイにスパルタが勝利し、ギリシアの覇権を獲得。

 当時のギリシア世界において、スパルタ軍が最強であったのは、少年愛は市民の義務であり、軍隊が互いに愛し合う男性たちで構成されたといった背景があったからだともいわれている。

美男の恋人に執着したソクラテス

「幸福になろうとするならば、節制と正義とが自己に備わるように行動しなければならない」

「人間の最大の幸福は、日ごとに徳について語りえることなり。魂なき生活は人間に値する生活にあらず」

 西洋精神の祖、ソクラテスはこう語っているが、彼の美少年好きは、海外ではよく知られている。

 彼は、日常的に太くて長い逸物で美少年を一撃で仕留めていたことから「痺れエイ」の綽名を持つ、少年愛の老練者でもあった。

 戦場で彼は傾国の美男と称されたアルキビアデスと、同じテントに寝泊りした。

 その際、ソクラテスは、「人々は、君の肉体の美しさを賛美する。だがぼくは、君の外見の美しさではなく、君の魂、つまり君自身の本質を愛しているのだ」と言って口説き落とした。

 以来、2人は親密な仲となり、肉の交わりを重ねている。

 アルキビアデスが30歳を超えて立派な成人になっても、ソクラテスは、この美男との関係に執着したという。