地政学と資源という極めて攻撃的なリアリズム
原油・天然ガスや戦略的鉱物が豊富なナイジェリアへの介入は新たな資源帝国主義を意味するのか。第1次政権では伝統的保守がトランプ氏にブレーキをかけたが、自由と民主主義の理念は消え去り、トランプ外交は地政学と資源という極めて攻撃的なリアリズムに変貌した。
高市早苗首相の対米外交は単なる「おべんちゃら外交」にとどまらず、トランプ政権の要求を先回りして提示し日本の裁量を確保する「リスク管理」に徹している。高市氏はトランプ氏が「個人的な称賛」と「ディール」を不可分に捉える人物であることを熟知している。
高市政権は防衛費の国内総生産(GDP)比2%達成を当初の予定の27年から26年春へと前倒しした。トランプ氏が重視する「米国の雇用」と「中国排除」をセットで提案することで日本の産業保護とセットにしたディールを成立させた。
トランプ氏は「強い指導者」を好む一方で「自分に依存しすぎる弱者」を軽視する。高市政権がトランプ氏との「黄金時代」を維持するには日本を敵に回したり見捨てたりすると米国にとって大損になると思わせる経済・軍事的な実力を示し続けることが肝要だ。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。