天然資源を米国のサプライチェーンに組み込む「威嚇外交」
今回の軍事介入で文明間の闘争における「守護者」としての地位を確立したいトランプ氏の政治的な思惑は明らかだ。その一方で戦略的な意図もある。米国はニジェールやチャドから軍事拠点を撤退させ、サヘル地域(サハラ砂漠南縁部)での影響力が低下していた。
介入はこの地域で米国のプレゼンス(存在感)を再び示し、中国やロシアの影響力が増す周辺国とのパワーバランスを是正する戦略的側面も併せ持つ。ナイジェリアの豊富な天然資源を米国のサプライチェーンに組み込む「威嚇外交」との見方もある。
ナイジェリア政府はこれまでキリスト教徒殺害の宗教的背景を否定してきた。しかしバカレ氏はナイジェリアが国民を守る能力を失っている現状では米国と共同してジハード(聖戦)主義者を掃討し、国家安全保障を強化する機会として利用すべきだと論じている。
リベラルの立場をとる米論評誌「アメリカン・プロスペクト」のハロルド・メイヤーソン氏は12月8日付で、トランプ政権の新しい国家安全保障戦略がもはや米国の伝統的な国家利益ではなく、特定の「白人キリスト教ナショナリズム」に基づいていると痛烈に批判している。